ghost.39 ページ39
私の親は音楽関係の仕事をしている。
母はピアニスト、父は作曲家。
そんな両親の元に産まれた私は当然、小さい頃から音楽に触れていた。
まだ物心ついたばかりの頃、父に連れられて観に行った母のピアノコンサート。
ステージの上でピアノを弾く母の姿は、綺麗で凜々しくて。
私は一瞬で虜になってしまった。
その日から、私は母と同じ"ピアニスト"を夢見るようになった。
そんな私を、母はとても喜んでくれた。
熱心にピアノを指導してくれた。
頑張ったら頑張っただけ上手くなる、上達すればするほど、両親からも褒められる。
私はそれが嬉しくて、毎日ピアノを練習していた。
母に憧れて、母のようなピアニストになりたくて、私は一生懸命頑張った。
努力の甲斐あってか、私のピアノの腕はみるみる上達していった。
「将来有望だ」なんて注目されて、賞もたくさん取って、私は少しずつだけど、母に近づけている気がしていた。
憧れの母に近付きたい一心で、私は毎日ピアノの練習に打ち込んでいた。
やがて大学生になると、私はより周囲から注目を浴びることになった。
首席入学だったことと、なぜか私の両親がピアニストと作曲家であることが知れていたからだと思う。
生徒からは憧れの対象として見られ、
先生からも一目置かれて、私は…
＿＿＿私は、常にひとりぼっちだった。
誰も彼も私のことを「高嶺の花」なんて呼んで、常に一歩引いた場所から、私を見ていた。
いつもいつも、誰かが私のことを見ていた。
母の知り合いも、父の知り合いも、大学の人達も、コンクールでよく会う同世代の人達も、みんなみんな、私に注目していた。
気が付いたら、私は常に誰かの期待を背負ってピアノを弾いていた。
その誰かの中には、もちろん両親もいる。
「もし失敗したら」。
「もしコンクールで賞を取れなかったら」。
想像しただけでも怖くて、そうならないために私はひたすらピアノを練習した。
半分ヤケクソ状態になってピアノを弾く私は、母に憧れて「ピアニストになりたい」と志したあの日から、ずいぶん遠い場所まで来てしまっていた。
期待、注目、プレッシャー。
色んなものを背負ってピアノを弾き続けていた。
そんなある日のことだった。
私は突然、ピアノが弾けなくなってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 317人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましゅ☆まろ。紫月まろ。(プロフ) - とっても面白かったです！今更ながらですが、完結おめでとうございます！ (7月24日 12時) (
レス) @page50 id: df7b4f216a (このIDを非表示/違反報告)
葉琥(プロフ) - 完結おめでとうございます。信じてもらえないかもしれませんが自分も一回幽体離脱したことがあって、その時、夢主ちゃんと同じような体験があってこんな偶然あるんだな〜っと思いながら読んでましたｗ (2020年9月5日 23時) (レス) id: b0d47f7052 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - 完結？おめでとうございます！！さとみくんが出てきた所で一人でずっとつぼってましたwお話面白い部分もあり、切ない部分もあり、すごく面白かったです！ありがとうございました！ (2020年3月29日 0時) (レス) id: d37bac9867 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お疲れ様でした！！すごく面白かったです！！ (2020年3月28日 17時) (レス) id: e38bb1f61d (このIDを非表示/違反報告)
詩織-siori‐ - すごくおもしろかったです。意外性のある作品だったので先が読めなくてすごく楽しかったです。 (2020年3月28日 15時) (レス) id: 2a36034942 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2020年2月28日 18時
