同居人はユーレイです。【青】

ghost.49 ページ49

「A！おはよ！」

「ころんくん！おはよう！」



あの日以来、僕は毎日Aの病室に通っていた。


どんなに忙しくても、時間を作って必ず毎日会いに行く。

僕はそう決めていた。


優しいAは「無理しないで」と言ってくれたけど、「僕が会いたくて来てるからいいの」と言ったら、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。




今日はいよいよ退院の日。

Aは今日まで毎日のようにリハビリを頑張っていた。


半年間も眠っていると、さすがに、意識が戻ってすぐ活動！とはいかない。

衰えた筋肉を鍛えるためのリハビリが必要だ。

僕も何度もリハビリのお手伝いをした。



Aは、またピアノが弾けるようになることが目標らしい。

最初にその話を聞いたときは、どういう風の吹き回しかと混乱したが、その後にAから「純粋にピアノを楽しんで弾きたい」という話を聞いて、嬉しくなった。


Aが前を向いてくれて良かった。




「……よし、荷物整理終わったよ！」

「おー、そんじゃ行きますか」



荷物を持って、病室を後にする。

Aは律儀にぺこりとお辞儀をして、病室を出た。


二ヶ月近く通った病院とも今日でお別れだ。





.






僕とAは一緒に住むことになった。

もちろん、前と変わらないあの家で。



Aが自分の身体に戻ってからというもの、僕は誰もいない家に帰るのが寂しくて仕方なかった。

いやまぁ、ペットはいるんだけど。


「行ってきます」や「ただいま」と言って、何も返事が無いのはやっぱり虚しいもので。

Aと出会う前は一人が当たり前だったのに、今ではすっかり静かな家に寂しさを感じてしまっている。


だから、今日からまたAと暮らせることがたまらなく嬉しい。





家のドアを開けると、Aが「わ〜…」と声をあげた。



「なんか、久しぶりだなぁ」

「前は毎日ここにいたもんね」

「二ヶ月来てないと懐かしく感じちゃう」



二ヶ月。

あっという間な気もするし、すごく長かったような気もする。


Aのいない家は寂しかったけど、病室に行けば毎日Aに会えたし、「退院したら一緒に住める」ってことを考えたら、どんなことでも頑張れた。


やっぱりAは、僕の元気の源だ。





「A、おかえりなさい」

「ただいま、ころんくん」



こうして今日からまた、

僕とAの同居生活が始まった＿＿＿。





「同居人はユーレイです。」

-fin-

あとがき ＋追記(2023.07.23)→←ghost.48

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