【短編集】朝日に目を眩ませた日。 (ページ2)

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時間が経ち、太陽が段々と山の後ろへ隠れていった夕方。まだ沈んだわけではないから、昼間同然の明るさが満ちている。

「コンビニまで買い物しに行こうよ。アイスもジュースも全部なくなっちゃった。」

コンビニは山の麓にある。つまり、坂を下っていくわけだ。私が求めるものは、自転車で二ケツして風を一身に受けること。ハルに私の体重を乗せて自転車を走らせろ、と言っているわけである。言うて、私の体重はそんなにない。寧ろ、理想体重である。友達の『身長から10引いた下二桁がその人の理想体重』という説によれば、だが。

「あ～？この暑い時に運動なんかしたくねぇよ。坂登るのめんどいし。」

「ちょっとは気温下がったよ。頑張れ。ガードレールんとこで食べて帰ろう。確か、浅見じいが今日花火の試し打ちするってたから綺麗に見えるよ。多分。」

『ガードレールんとこ』は、坂の途中にある傾斜があまりないところのガードレールを指す。昔から二人の待ち合わせ場所だった。風通しもよく麓の町が綺麗に見える秘密基地のような場所だ。『浅見じい』は麓の町に住んでいる花火職人である。試し打ちは、もうすぐ行われる花火大会に備えてのことだろう。

そういうとハルは、顔は顰められたままだが、渋々頷いてくれた。やったあ、と微笑みを漏らす。
簡素だが、二人きりの、二人だけの花火大会である。

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