【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ10)

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010 - 逃亡ページ10

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どうしてこうなった。
これがリハビリをサボろうとした私への罰か。

サービスの提供に対価を求めるのは当然の権利である。売買契約とはそういうものだからだ。それについて私は文句を垂れるつもりはない。問題はその契約内容のほうである。
どう考えてもケバブひとつと人間ひとりが釣り合うわけがなかろう。第一私が注文したのでもないし、エースが金銭を持たずして腹を満たそうとしたのが悪い。ここに来る前にも無銭飲食で川流し食らってたのに懲りてないのかよ。

炎を纏ったエースから離れ、私は路地裏という迷路に飛び込んだ。

室外機やパイプの上、ベランダの柵なんかをパルクール競技選手のように乗り継いでいく。
一方は集団で、それも輓馬くらいのもの凄い勢いで、ゴミやら積み上げられた何かの資材やら、薬の売人や娼婦であっても見境なしに薙ぎ倒しながらこちらへ猛進してくる。
これでは、身軽さと体格差を活かして障害物の多いルートを選んできた意味がない。圧倒的に不利だ。地形を熟知している相手に武があるし、立場上、民間人を怪我させるわけにもいかないので妨害のしようもない。裸足であることも災いし、逃げようとすればするほど脚を酷使した。
どうにかしなければという焦りが判断力を鈍らせ、己の首を絞めていく。

縦樋を登り、波板に着地。洗濯ロープを掴もうと地面を蹴った。そう、掴もうとした。

『…ッ！』

届かなかった。

染料を流し込まれたように赤く色付く。
平衡感覚を失った右目は、私の左目を抉った何かがすぐそばの煉瓦に突き刺さるのを見た。なんだろう、アレ…金属片？
かろうじて受け身は取れたが、高所からの落下とあっては完全にはダメージを殺しきれず、背中を強く打った。無茶な動きをしたせいで、膝が悲鳴を上げている。ほどけて絡まった包帯だって、私を薄暗い路地に留め置こうとしているみたいだ。

壁を支えにして立ち上がる。体が先に出て、それに足がついていかず、前のめりになって倒れる。踏み出そうとするたびにひょいと足元をすくわれたような感覚に陥り、夢遊病者とか酔っぱらいみたいな挙動で、ろくに歩くこともできない。

何者かにぐん、と腕を引かれて、臨戦体制を取った。
もちろん戦う余力など残っていない。これは威嚇だ。仔猫が熊を相手にするようなものだろうと、諦めの悪さが唯一の私の取り柄なのだから。

しかし。

「…悪いようにはしない。どうか、じっとしていてくれ」

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