【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ9)

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009 - 連れ添いページ9

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つまり、この島で海賊は珍しくもないし、むしろ歓迎される。もの珍しい目で見られるのは、そうでない人間のほうである。

大通りに入る前に、エースに貸してもらったテンガロンハットを目深に被りなおす。ごった返した人の群れにのまれないよう、影法師に似てピッタリと付き従って歩いた。

食料品から生活必需品・雑貨類まで、多岐に渡る屋台店が道中に軒を連ねているが、私にはそのどれもがオレンジ色のツバに遮られ、土気色の土台部分しか見えていなかった。
大道芸人への歓声。酔いが回った男たちの大合唱。各々の商売に精を出す、威勢の良い声なんかも頭上を多く行き交っているのに、特に耳をそば立てておらずとも、明らかに自分たちのことを話しているという声が聞こえてくるのだから、自然と猫背にもなってしまう。
隣を歩く男も大概有名人だから、相乗効果は半端ない。

「おい見ろ！ケバブだとさ！肉食おうぜ肉！」

回転する巨大な肉の塊に流涎し、食品の提供をいまかいまかと待つ青年は、見た者に犬の耳と尻尾を幻視させた。見れば見るほど、どこにでもいそうなごく普通の好青年だから困る。モーターボートを操縦しながら片手間に着替えてしまうくらいには器用さのスペックも高い。まあ、人の着替えなんてまじまじと見るものでもないので、あの間手放しで走行していたと聞かされたら今更ながら卒倒するのだが。とにかく、身柄だけでなく、突拍子のない行動まで掴みどころがないってことだ。
私には兄弟はいないので、兄がいればこれだけ賑やかだったのかなあと思う。でも、どちらかというと兄というより手のかかる弟のような気がしてきた。

目の前にケバブが差し出される。断るつもりが、芳ばしいタレの匂いに鼻腔を刺激されては、自然と顔が吸い寄せられてしまった。あ、ちょっと和風なんだ。美味しい。
私がそのひと口を味わって咀嚼している間にも、エースは残りをぺろりと、彼にとってのひと口で完食した。

異変に気づいた私が足踏みをすると、「待ちな！」と露店の店主が舌打ちした。「アンタ、金は？」
嫌な予感がして、ハットの紐の留め具を極限まで顎に詰める。
エースは「ああ。悪いな、おっさん。金はねーんだ」とあっけらかんと言い放った。これはまずい。

「ちょっと待ちな兄ちゃん。こっちは商売なんだよ。金がないってんならそれは仕方がない。代わりに」

後頭部に銃口が突きつけられるのを察した。

「その嬢ちゃんを置いていきな」

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