【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ7)

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007 - 強行突破ページ7

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まさか嫁入り前に男の人とひとつの寝床に入るなんて、そんな破廉恥なこと想像すらしたこともなかった。初体験を予想外の形で奪われてしまっては、こんなところ誰にも見られませんようにと願ったって許されたい。
くびれた胴を抱くように引き寄せられ、その上から布団が覆いかぶさっている。みじろぎさえ許さない筋肉質な腕の中は、暗いうえに暑い。海兵の制服である白いシャツを通して、彼の規則的な鼓動が耳朶を打った。

足音が近づいては遠ざかったり、ドアが幾度と開閉されたり。完全に聞こえなくなるまで密着していたのは、リンゴを食べきるより途方もない時間であったことだけは確かだ。

「…行ったか？悪ィな、苦しかったろ」

『あ、だ、大丈夫です』

大丈夫なわけあるか。

拘束が緩むや否や、弾かれるようにベッドから滑り出る。
手配書で見たことのある男が、さっきまで私が横になっていたベッドにあぐらをかいた。
胸の内で感嘆の口笛を吹く。実物は写真より顔が良い。

「まあ、何だ。これも何かの縁ってことで、お前に頼みたいことがあるんだが」

迷っちまってさ、と人懐こい笑みに毒気を抜かれそうになり、慌てて首を振った。
頼みごとをされたら断れない優柔不断女と知っての狼藉なら、嫌がらせが過ぎるぞ。イケメンだからって。

だが一応、こちらとしても一蹴するには勿体ない提案ではあった。
獲物を逃がさないために退路を塞ぐのは狩りの定石。いまごろ玄関口周辺の警備はより厳重になっているはずなので、追い込み漁をするつもりなら素直に案内してしまうのが手っ取り早く簡単なのだ。
けれど、もしそれで本当に逃げ出すことに成功してしまったら？私は罪人の逃亡を助けたことになる。数の暴力で押しても勝てないなんて思いたくはないが、慎重にはなったほうがいい。それならば、それなりの階級を持つ要人の部屋まで誘導するのが安心か、あるいは…。

「見つけたぞ！」

「げェッ！帰ってきやがった！」

『えっ！ちょ、わ！？』

時間切れのようだ。ついに道案内を望めなかったエースとともに、私はガラスの耳障りな炸裂に包まれた。
彼はあろうことか、私をまるで布切れでも引っ掛けるように軽々と小脇に抱え、海岸まで走り出したのだ。

　(窓から飛び降りたぞ！)
　(くそ、海兵を人質に取られた！)

このときばかりは、世界が私を中心に回っていた。それはさながら、安全を保障されていない遊園地のアトラクションのようであった。

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