【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ12)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:17,410 hit

012 - 超新星ページ12

.

指示されるがままに、眼球をぐるぐる回しながら瞬きをする。その動き自体には痛みは伴わなかった。角膜は傷ついていないので、失明の事態は避けられそうとのことだ。

「火拳の連れか」と訊かれ、答えに詰まった。そういうことになっています、とは流石に言えなかった。

『そうです』

「船着場まで送っていこう。多少遠回りにはなるが」

不自然に言葉尻を切った男の視線を追って、その先の砂浜を見た。

爪の先くらいの大きさの人影が、周囲を取り囲まれて立っている。
それだけ遠くにいるというのに、視覚が明瞭な輪郭を描く前から、その人物の左腕がおよそ人体の一部であるとは思えないほどまでに膨張してるのがわかった。
鉛管や配線が剥き出しになった様々な機械の残骸のほかにも、己に向けられた武器さえも強制的に取り上げて引き寄せ、質量を増していく。そして、軽く見積もっても一軒家並みに膨れ上がったその塊を、「反発(リペル)」という宣言とともに四方八方に分散させた。銀色の射線が、人間もろとも景色を横に切っていった。
観察した限り、引き寄せた物体は精密に個々を操作できるわけではなく、磁気操作によって無条件に跳ね返してしまうようだ。私の目元に飛んできたのもその流れ弾だと理解した。

摩擦で焦げた金属の粉塵がここにまで降り注ぐ。だがそれらは私の服をいま以上に汚すことはなく、男の外套に傘のようにして防がれた。男前が過ぎるぜ旦那…。

市街地に戻れないとなれば、戦場と化したあの砂浜を通っていくしか道はない。
「ユースタス・キッド」その呟きに、頭の奥に仕舞われていたヘルメッポとの会話の記憶が躍り出た。

＿＿＿＿【超新星】。

同じ年に海へ出ては好きなように世界を引っ掻き回している、捕縛を急がれる億超えルーキーたちの総称。近い将来、モンキー・D・ルフィもその名で呼ばれることになるだろう。
当時は酔っ払いの戯言と思い(脈絡もなく私に好意を告白するくらいには酔っていた)適当に頷いて流していたので、誰が名前を連ねていたのかは忘れたどころか覚えてすらいない。けれど、いまこのタイミングでそんな日常会話を思い出すのは、キッドと呼ばれたあの男も、そして私を助けてくれたこの男も、その超新星にあたるからではなかろうか。
根拠のない確信が一才の真相真実であるかのように、曇りなく冴えわたって腑に落ちた。

ちょっと待て、ここで超新星同士が衝突したらどうなる？

.