【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ2)

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002 - プライドページ2

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投げ出された腕を靴裏に踏みつけ、無骨な手が私の頭蓋の輪郭をなぞる。刹那主義である彼の気分と力加減の次第では、容易く脳みそまで突き破られてしまいそうだ。

生きたまま脳を破られるなんて悍ましい死因を、どうにか回避しなければと強く思う。だが、そんな思いとは裏腹に、どこの筋肉も命令に従ってくれる様子はない。微弱な電気信号は、瀕死の肉体をせいぜい陸に打ち上げられた魚のように痙攣させることしかできなかった。
ネジの切れた玩具かのような滑稽な動きでは、目の前の大男の口角をわずかに吊り上げるくらいの効果しかもたらさない。

それならばと、今度はサングラス越しに彼の双眼の向こう側を覗いてみる。そして、やめておけばよかったとすぐに後悔した。あっという間に視線を絡め取られ、そのまま逸らすことさえ叶わなくなったのだ。
背筋が凍りつくのとは反対に、内臓は焼鏝を飲んだときのようにビリビリと灼け爛れる。一切感情のないそれは、心と体をいとも容易く侵食し、私という個性が入り込む余地をなくすほどまでに圧倒してくる"王の資質"そのものだった。
歯が震えて仕方がない。涙腺だって、水分さえ渇いてなければ決壊している。腫れあがった喉ではうまく呼吸ができず、胸腔が押し潰される心地がした。

＿＿＿それでも私は、焦点の合わない目で彼を睨み返すことだけに集中した。
恐怖心を爆発させることなく、いまにも気絶してしまいそうな脆弱な精神を、あたかも他人事のように受け流し続けた。
目を閉じたとき、それが私の最期になる。ここで命が潰えようとも、プライドまでは傷つけさせるものか。

「……フフフフフ！随分とイイ顔するじゃねェか！気に入った！どこまでも真っ直ぐで、穢れを知らねェって人間の目だ…！」

どこか興奮したような吐息が耳にかかる。その言葉を最後に、肌を突き刺す威圧感は鳴りを潜めた。

ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
今度は薄い皮膚ごしに骨の形を確かめるように動かされていた手が、するすると下に滑り降りてきた。
その動きのまま指の背で頬を撫でられたとき、脳天から背中にかけてざあっと鳥肌が立っていった。不快感からくるものではない、妙な鳥肌だった。
壊れ物を愛しんでいるかのようなその手つきは、なんというか、略奪行為に悦を見出す海賊らしくない。とはいえ、初対面の男に簡単に絆されてやるほど私はウブな女ではないのだ。それに。

＿＿＿＿＿おれが穢してやろうか。

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