ラナンキュラス ▼吉沢亮 (ページ8)

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常備菜とは名ばかりの作り置きおつまみも、時短で作った鶏大根も、もちろんお酒も、ほとんどが空っぽになった頃。

「Aはさ、なんでバイトしてたの？」

『仕事がなくて家賃払えなかったから』

「え、嘘、仕事めっちゃしてたじゃん」

『高3の終わりくらいかな？から、ちょっとずつ増えてきたけど、それまでは全然。小さい事務所だし、ツテもない社長と一緒に直談判しては心が折れてって感じ』

「そうだったんだ……ねえやっぱ家族のこと聞いていい？Aからちゃんと聞きたい」

阿比ちゃんがどこまで亮に話してるのか、よく分かってないけど。この話を自分で人に話すのは、社長相手以来、2回目。もはや初めてと言っても過言ではない。

いつもなら聞かれても絶対にはぐらかす話題を、お酒に全ての責任を転嫁して、話してしまうのは、誰かに聞いてほしかったからかもしれないし、単に亮が、既に知ってるからかもしれない。

『よくある話だと思う、望まない子だったから、他人に譲りました。みたいな感じ。』

「よくは無いよね」

『よくあったら困るよね』

「A、こんなに可愛いのにね」

『ほんとだよね。でも引き取り手がいなくて、施設でも疎まれてたんだよ。こんなに可愛いのに』

「ありえね～」

『突っ込むとこ！笑

ずっと、妙に背高くて、手足が細長くて、顔つきも怖くて、髪も白っぽかったの。あとからロシアとのハーフって分かったんだけど。

里親志望のひとたちも、みんな怪訝な顔したし、施設の人も、お前は出るなって。悪魔みたいだってさ。』

「そういう人ほんとにいるんだ」

『いたね～。結局、15歳の時に、今の社長が不純な動機でやってきて、私を見つけて、その場で一緒に来てくれ～！！って土下座までしてくれた。』

「なにその不純な動機って、笑」

『芸能事務所を立ち上げたのにタレントがいない！スカウトしても怪しまれる！！どうしよう！！！そうだ、里子だ！！！！

って言ってたよ』

「ははっ、超不純だー！」

『それ聞いた時ははっ倒そうかと思ったけどさー、もうわたし両親のことなんざ覚えてないのよ、社長と阿比ちゃんが両親みたいなもん。』

「へ～」

亮は、ずっと優しく笑って聞いてくれていた。