60貴方side ページ10
バイクの音だけが流れる。
冷たい風が身体を押し、空を見上げると雲一つない空で
ポロポロと水滴が頬を流れる。
あぁ雨か、私だけ雨が降ってる。
雨は嫌いだ。
『っ……』
会う度に思い出すあの人への想いを消せなくてまた愛してるって言えなかった。
私も、雅貴も広斗も前に進まなきゃいけないのに進ませてないのは私のせいか…
あーもうどうにでもなれ…
私は涙を拭い歩き出す。
とりあえず帰ろう。
『ただいま』
コ「…ん」
帰ると不機嫌なコブラが居て、
『どうしたの？』
って聞いても何も返答がなくて…
昨日帰ってこなかったからだろうなぁ…
とりあえず風呂に入ろうと思って風呂場に行き、お湯を溜め湯船に入ると、
コブラも入ってきた。
『入ってまーす』
コ「うるせ、」
と言いながら一緒に湯船に浸かる。
『温いね』
コ「…目、腫れてんぞ」
優しく顔を撫でられる。
『ゴミが入ってね、少し痛いの』
と、苦し紛れに誤魔化してコブラの手を握る。
コ「…Aノボルに会ったんだろ」
と急に言われ、コブラの顔を見ると悲しそうな瞳で私を見つめていた。
『うん、』
コ「山王連合会はノボルとAが帰って来れるように作ったんだ、」
『大丈夫だよ、絶対ノボルは帰ってくるよ…！』
コ「…Aお前は？帰ってくるのか」
『えっ……』
コ「居なくなんじゃねぇぞ…」
コブラは湯船から出て風呂場から離れる。
お湯がどんどん冷たくなってきて、
なんで、ずっと居るよって言えなかったんだろ…
もう離れないって約束にしたのに
『はぁ…最低だな』
風呂から出るとコブラはもう出かけていた。
適当に服を着替えて、
布団に横たわりそのまま意識を手放した。
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作者名：いち | 作成日時：2017年10月15日 23時
