王子はいかが？ (ページ10)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:57,923 hit

10 ページ10

｢Aの事放っておけない理由分かったかも｣
｢何ですか？｣
｢何か妹みたいな感じだよね｣

純粋に嬉しかった。
今まで家族の存在が薄かった私にとって家族を感じさせる言葉が新鮮であったのだ。

｢なにニヤニヤしてるのー｣
｢え？そんな顔してました？｣
｢うん。可愛い｣
｢うるさい｣

頭を撫でようとする手をパチンと叩き落とした。
それでも一樹はめげずに髪をぐしゃぐしゃにする。

｢もーやめてー！｣
｢俺の手を逃れられると思うなよ｣

一樹の身長だと立った状態でやり返そうとするも届かない。
じゃれ合う2人は本当に兄妹のようで久々に素直に笑えた時間だった。

｢出かける前から疲れたんですけど｣
｢俺も疲れた(笑)よし、次こそ行こうか｣

車に乗り込むと微かに煙草の香りがした。
しかし昨日から1回も煙草をすっている姿を見ていない。
もしかしたら私に遠慮しているのだろうかと思い尋ねた。

｢煙草吸うの？｣
｢んー？今は辞めてるよ｣
｢そうなんだ。煙草の匂いがしたから｣
｢多分メンバーが吸うからかも。こないだ乗せたし｣
｢メンバー？｣
｢俺バンドしてるから｣

バンドマンと言えば、もっと派手なイメージだが一樹は落ち着いて見える為、きっとバラード系の大人なバンドなんだろうと勝手に納得した。