王子はいかが？ (ページ47)

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何も言わず無言でコートを羽織り荷物を持つと玄関へ向かう。

｢ちょっと待てって！一樹が来るまで待ってろよ｣
｢いえ、結構です。お世話になりました｣

自分の感情を抑えることが出来なかった。
確かに優は優しい。だが何も知らないとはいえ一樹を否定されたと思うと同じ空間に居る事に耐えられない。
ほだされかけた心が一気に塞ぐのが自分でも分かる

｢まじでどうしたの？俺が何かまずい事言ったなら教えてよ｣
｢…別に｣
｢別にって言う時は何かある時だから｣

私の腕を掴む手に力が入った。
何が何でも外に出さないつもりだろう

｢いいから私の事は放っておいて下さい！｣
｢…あっそ。勝手にすれば｣

掴む手が離れ、優は部屋へと引き返した。
誰も居ない廊下に小さな声でお礼を言うと外に出た。
さきほどまで居た室内とは別世界の様に凍てついた寒さだ。
徐々に手と顔の感覚が薄れていく中でバッグから携帯を取り出した。

｢もしもし｣
｢一樹？今どこ？｣
｢あと5分くらいで着くよ。体調は大丈夫？｣
｢うん。優さんの家の下で待っとく｣
｢えっ！？外にいるの！？優の家で待…｣

優の家にいない事で何か言われそうな気がして通話終了を押した。
凍える手を温めようと再度バッグを開けて手袋を取り出そうとした時に何かが入っているのに気付いた。