王子はいかが？ (ページ40)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:57,936 hit

40 ページ40

そひてついにメンバーが続々とステージに上がっていくと会場内にメンバーの名前が飛び交う
もちろん一樹の名前もだ。
にこっと笑い会場を見渡したと思ったら、すぐさま表情が変わりギターを激しく鳴り響かせ、普段とは全く違う姿に息を飲んだ。
一樹の前に居る女性達も釘付けになっていた。
私も目まぐるしく変わる曲に完全にのまれ、結局ライブが終わるまで一樹から少しも視線を外す事は出来ず、楽屋に行くように促されて初めて現実に戻った気がした。
ドアを開けると、みんな清々しい顔をしている

｢A！どうだった？｣
｢楽しかったよ｣
｢ほんと？良かったー｣
｢一樹まじで俺が見る度Aちゃんの方ばっか見てたからね｣
｢今日は一聖とよく目が合うなーと思ってたらチェックしてたの？！｣

とてもライブ終わりとは思えないほどのテンションで話し続け、一樹は子供のようにはしゃいでおり、きっとこのバンドが本当に好きなんだろうと感じさせる。
一樹が楽しそうにしているのを見て私も嬉しく感じてしまう。

｢A｣

後ろから名前を呼ばれて振り返ると優が手招きしており、近付くと手を出されて首を傾げる。

｢なんですか？｣
｢これあげる｣

手渡された物を見るとのど飴だった。
確かに会場は乾燥していて喉が少しだけ痛くなっていたから有難い。
たまたまなのか分かっていたのかは分からないが優が実は優しいという事が充分過ぎるほど分かった。

｢ありがとう｣
｢ちゃんと言えた。進歩してんじゃん｣

そう言うと優は私の頭をぽんぽんと叩いた。