王子はいかが？ (ページ30)

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｢Aー起きて｣
｢んー…｣

軽く体をゆすられて目を開けると、一樹は既に身支度を済ませていた。

｢もう出る時間！？｣
｢俺が早めに起きただけだよ｣
｢びっくりした…｣

飛び起きた体を再びベッドに沈めた。

｢ほら、起きて。ご飯出来てるよ｣
｢ご飯まで作ってくれたの？｣
｢時間あったからね｣

リビングに行くとトーストにサラダ、目玉焼きにソーセージというパーフェクトな朝食が用意されている。
食べる前に台所に立ち一樹の分の紅茶を淹れてテーブルに並べた。
朝食を取りながらたわい無い話をする時間ですら特別な時間に変わる。

｢そろそろ出ようか｣
｢うん｣

手早く身支度を終わらせて一樹の後ろを着いていく。
集合場所まで行ってメンバーやスタッフと合流して会場に向かうらしいが初めて会う人しか居ない場所に行くのは今までの私では考えられない。
徐々に緊張が高まっていく

｢大丈夫だから｣

そんな私の気持ちを察したのか一樹が手をぎゅっと強く握った。

｢おはよー｣

一樹が声を掛けると各方面から返事が飛び交う。
私は一樹の後ろに隠れたまま何も発せなかった。

｢あ、一樹の彼女！｣

小柄で金髪の男性が声をかけてきた。大きいサングラスを掛けていて顔はあまり分からない。
反射的につい攻撃的な顔付きになってしまう。