王子はいかが？ (ページ27)

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～一樹side～

何気ない仕事帰りの日常の中で何故足を止めたか分からない。
いつもなら通り過ぎてしまうであろう状況で何故かあの子に話しかけなくてはいけない気がした。
こんな雨の日に遠く寂しそうな目で誰も寄せ付けない雰囲気を全身にまとっている。

｢風邪ひくよ｣

声を掛けると案の定俺の全てを拒否した。
ここで普通なら去るんだろうけど、この子はこのままにしていてはいけないと根拠の無い考えがあった。
この子を見ていると悲しさ辛さが伝わってきて放っておけなかった。
きっと助けを求めているけれど助けの求め方が分からないのだろう。
気付けば彼女を抱きしめていた
街行く人は無関心だ
つい先程まで俺もその中の1人だったのかもしれない。
泣きじゃくる彼女はとても脆く弱い
それを隠す為に誰も寄せ付けない術を身に付けたのかもしれない。

そんな彼女に引き寄せられ傍観者から当事者へと変わったのだ。
雨風にさらされ冷たくなった彼女をどうにかしなければ、このまま何をするか分からない。
どうにかして家に帰らせなければと考えたが送ると提案しても即座に断られてしまった。