アマミツツキ【天喰環】 (ページ5)

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文字通り、ミリオの圧倒的パワーに数名から不満の声が上がる。
ミリオは自分の個性を透過だと教えた。そしてこの個性をうまく扱えないことで味わった底辺と、這い上がるために必要な予測をインターンの経験で積むこと。職場体験とインターンでは、仮免許を取った時点で、現場に出ればサイドキックやプロとして同等に扱われる。学校では体験できなことを経験して、この雄英高校のトップに登りつめたことを語った。
「ので、怖くてもやるべきだと思うよ！一年生！」
ミリオの熱が、後輩たちの胸に火を焚いたように、自然と拍手が鳴り、感嘆した声が漏れる。
「話し方もプロっぽい」
「１分で終わる話をここまでかけてくださるなんて」
感銘を受けた一年生たちは、思い思いに意気込みを語る。どこか腑に落ちた様子でインターンに対する心構えと覚悟が芽生え始めた。
頃合いを見て相澤が挨拶を促すと『ありがとうございました！』と揃った声が場内に響き渡った。

その声を背に、ビッグスリーは訓練場を後にして制服に着替えると、校内をまた３人で歩く。
ねじれとミリオの会話が盛り上がる中、天喰は気づいていた。いつからAは居なかっただろうか。
「二人とも、話の腰を折るようですまないが…先に行くよ」
ミリオが一年全員に腹パンするまでは居たはずだ。それまで、気配なく隣に立ち天喰を驚かし、実のない話をして、詰まるところAのことは少しも分からなかった。分からないことが分かったということだけ。事実、何も分からない。
けれども、居場所は分かる気がした。

Aはあの時、腹部を抱えた一年生たちがミリオの元に集まる人の波に紛れて、訓練場を抜け出していた。
陽に温められたコンクリートの上に寝そべって、瞼を閉じている。何となく感じる無機質な匂いと、そよぐ風が心地良かった。日焼けなんて気にせず、太陽の光を浴びる。透き通った肌が太陽に照らされて透明度が増す。
自由なその姿が、天喰には、まるでミリオによく似て見えて、とても静かだった。
「見つかった。そういう個性？」
「いや、違う」
一人になれる場所。そういうところを好んで、求めて、無意識に足を運んでいることもある。
天喰は、小学校３年生の時のことを思い出す。あの時の自分もそうだった。初日に失敗して、クラスに馴染めない自分もそうやって、ミリオに光を与えてもらうまでは、孤独で、自分の殻に閉じこもっていた。
Aも同じだっただろうか。

Aも、一人になりたかったのだろうか。