青天の霹靂【日々樹渉】 (ページ2)

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戯曲ページ2

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脚本の依頼は勿論断った。第一、私は執筆に追われている身である。その次の理由は演劇、そして彼のことを全く知らないからだ。

さらり、と私の髪に誰かの指が触れる。何故か擽ったく感じてしまい顔を上げれば、見慣れてしまった瞳が二つ。私と目が合う。

｢今日も寝てるじゃないですか｣

日々樹渉、と名乗る彼は脚本を依頼した男である。まるで芸名みたいな名前だと、私は思った。あの日から彼は毎日のように普通科の三年C組に現れた。そして、眠りこけている私を起こす張本人である。

｢染めてしまった青、お似合いですよ｣

何も答えない私を気にすることもせず、彼は一人で話し続ける。青く染めた私の髪は、彼の綺麗な指が伝い煌めいた気がしてならない。執筆中である作品の登場人物の髪を染める場面、自分自身が経験しないと現実感を与えられないと思いきった行動に出たところ、周りからは好まれなかった。校則違反だ、自分でも情けない。

｢日々樹くん、私学校辞める｣

｢初めて聞きましたよ、Aさんの声｣

｢だから脚本も書かないよ、転校するの｣

彼が、何だか嬉しそうな顔をしたような気がして思わず無視して話を続けた。物好きな人だ彼は。こんな私に引っ付いて。アイドルのくせに。

｢だからもう、私のところに来ないでね｣

本当のことを言えば、同じクラスの女子に放課後の教室で日々樹渉と私が二人きりだとバレてしまい噂を流された。彼がかなり人気のあるアイドルの卵だと知ったのと同時に、私の女々しい感情に気づいた。日々樹渉と毎日会えることを楽しいと思っている自分自身の存在が、とても忌々しい。

それなのに彼は、私の言葉を聞いていないようだ。私の毛先を勝手にくるくると自身の指に巻きながら私に提案してくる。

｢桜でも見ましょうか｣

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