誘惑 ページ12
．
『 零、さん 』
ぽつり、と自然に口から溢れたその言葉は
言ってはいけないのに 。
「 もしかして、聞こえちゃったか 」
シングルベットを弾ませて、
彼が立ち上がった 。
今日は、香水が薄いね 。
あなたといても、今日は平気だ。
あの夜は強い匂いに身体が麻痺したような気分であった。
「 ここのホテル、最低二時間らしくてさ
まだ余裕あんじゃん 」
＿＿暇だし、飲み物でも買いに行こうよ。
そう言った彼に、うん。と答えた。
最近はなんだか頭が回らない、
自分がどうしたいのかもよくわからない。
まるで第三者として私を眺めるように
感情も表情も乏しい自分に気づき、悔やんだ。
「 ホントはさ、
俺がAちゃんの分を買いに行くつもりだったけど
何があるか分からないじゃん 」
安っぽい扉を開き私たちは廊下へ出た。
照明は普通の蛍光色で安心した 。
羽風くんが、また私の歩幅に合わせて歩いてくれた。
この時間を、二人で共有した気分になる、
少女漫画をなぞるような心境に安堵の涙が出そうだ。
「 わ、エレベーターは綺麗 」
羽風くんが無口な私に気を使うように話すので
羽風くんに救われている。って痛感した。
４階の奥にあるはずだよね。
受付で見た見取り図を思い浮かべた。
．
「 うっわ、こりゃお偉いさんかな 」
エレベーターが開いた四階 、
ピンクの灯りに照らされた廊下には
貸し切りの立て札が並ぶ。
『 四階は宴会場らしいね ＿＿ 』
エレベーターを降りてすぐ横にあった貼り紙の
宴会場 ＿ 魅 の文字を見つけた私はそう告げた 。
奥の自動販売機はご自由に使えるらしく、
私たちはそこへ向かった 。
．
あはは 、 わはは
若い女の子 、 男性の笑い声が扉を越えて聞こえてくる。
『 ＿＿ こわい 』
こわい、と単純な感情が口から溢れた 。
「 手、繋いであげちゃうよ 」
彼はこなれたように、私の右手の指を絡める。
『 恋人繋ぎは無理、やめよ 』
「 いいの、いいの 」
なんて、彼は平然として。
．
＿＿＿ あれ 、 彼処に
＿＿＿＿父が
.
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白城あろ(プロフ) - ユミカさん» コメント本当にありがとうございます！ユミカさんにそう言っていただけると、羽風くんの作品書いてよかったなと心底思いました。とてもとても嬉しいです。私もユミカさんのファンとしてこれからも作品読ませていただきます！ (2017年6月14日 22時) (
レス) id: 411fdf32c4 (このIDを非表示/違反報告)
白城あろ(プロフ) - ハルさん» コメントとても嬉しいです。ありがとうございます。涙がでてきたなんて、、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントありがとうございました！ (2017年6月14日 22時) (レス) id: 411fdf32c4 (このIDを非表示/違反報告)
ユミカ(プロフ) - 完結おめでとうございます！あろさんの文章は綺麗で、羽風薫というキャラの魅力が存分に発揮されていると思います。かっこいい羽風薫をありがとうございました･･･！さらに羽風薫が好きになりました！これからもあろさんのファンとして、応援させていただきます！ (2017年6月1日 23時) (レス) id: adf92d0f83 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 最後まで素敵なお話でした！羽風薫好き過ぎてしんどいです。。。最後の方とか涙出てきちゃってほんとに視界が歪みました。素敵な小説を書いてくださり、ありがとうございました！ (2017年6月1日 23時) (レス) id: 8965abc530 (このIDを非表示/違反報告)
白城あろ(プロフ) - ろいど軍曹??稲妻に貫かれたさん» そう言ってくださり本当に本当にありがとうございます。更新遅くてごめんなさい。そう言ってくださるおかげで頑張れてます。本当にありがとうございます！ (2017年5月28日 10時) (レス) id: 4c3b6f4a7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白城あろ
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年1月29日 21時
