はじめまして 、私のアリス ページ1
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舌に響く甘すぎる感触に目を覚ます。覚束無い脳内の機能で無理やり瞼を開けると目の前に彼がいた。
「ち、茅ヶ崎先輩」
彼は普段のカッチリとしたスーツからは想像もつかないような大きなハットを被りスーツの至る所に装飾がほどかされている。
茅ヶ崎先輩という方は職場の先輩である。
甘いルックスと優しい人柄で社内ではたちまち人気になり、上司の千景さんと並んで王子扱いだ。
まるでそれは帽子屋のようだ。
＿＿＿＿ そんな筈ないのだが。
「ようやく声が聞けたと思ったら男の名か
＿＿＿＿ つれないなぁ 」
へ、と史上最強の阿呆顔を見せてしまったろう。その発言の衝撃はそれ程大きかった。
「アリス、君はさ」
「あ、ありすですか？」
茅ヶ崎先輩は何を言っているんだか、そう問いたかったが嘘とは思えない物言いに私は口を閉じた。
彼の唇がゆっくり開いて、動いた。
「その男のことが好きなの？」
そう、私を試すようにからかうように。
「私、アリスじゃない」
好き、それが事実なのだが言える訳ない。
本人は茅ヶ崎至の名を知らないと言うが顔も声も、本人でしかないのだから。
まるで間接的に告白するように感じてしまい、心臓が未だバクバクと脈打つ。
「おかしいな、俺はアリスを呼んだんだけど」
顎に片手をついて首を傾げられる。此処の場所も何もかも知らないという危険な状況だが、私は好きな人にとても似ている人と2人きりの現状に少し浮かれていた。
「いや、君がアリスだ」
「だから、なにを言ってるんですか茅ヶ_ 」
その名前を口にしようとした瞬間彼の人差し指が私の唇に優しく押し付けられる。
「世界が君をアリスと認めなくても
俺が君をアリスとするんだからそうなんだよ」
何が何だか理解が追いつかない。でも、こんなことされてそんな真剣に言われてしまえば頷く他はなかった。
「じゃあアリス、俺と冒険をしようか」
彼は未だ動揺する私の片手を掴んで先輩と同じ微笑みを浮かべた。
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作者名：白城あろ
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年3月27日 21時
