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3月。修行式が終わった私たちは、短い春休みに入る。
これが終わって4月になれば、いよいよ高3。私は受験生になる。
私は亮くんとのデートに出掛けた。
そんなある日。
いつもの海、堤防で亮くんが口を開く。
「俺さ、俳優になりたいねん。」
「そういえば言ってたね。」
「せやから、卒業したら上京しようと思ってる。」
「・・・そっか。」
夢を叶えたいという亮くんは相変わらずキラキラしていて。
私には、止める権利も無いし、止めるつもりもない。
でも、寂しいって思うぐらい許して。
「・・・引き止めへんの?」
「引き止めたら止まってくれる?」
「・・・いや。」
「でしょう?」
ここで引き止まるような人だったら、私は多分好きになってない。
亮くんはどこまでも前に先に行って、そして輝くべき人。
「・・・それで、ここからが本題やねんけど。」
「・・・。」
「これ、書いてくれへん?」
出された薄い紙。波風に当たってひらひらなびく。
見せられた私は、絶句した。
だってそれは、それは。
左側が埋められた婚姻届け。
「・・・どうして。」
それは、亮くんの未来を縛るものじゃないの?
「言ってしまえばこんな紙一枚。
それに今すぐ出すつもりもない。」
「・・・。」
「でも、何やろ。上手く言えへんけど、
紙一枚でも安心できるっていうか、俺の決意の表れっていうか。」
よく分からない。
嬉しい気持ちと戸惑う気持ち。
私が右側を埋めたら、“私は”幸せになれると思う。
でも、亮くんは?
「亮くんは、それでいいの・・・?」
出した声が震えたのが分かった。
もし、もし一時の気持ちでその決断をしたのなら、
それこそ少し立ち止まってほしい。
でも亮くんは、フッと笑った。
その美しさに、私は目を逸らせない。
「勘違いしとるみたいやけど。
これはAが俺を縛るためのものやない。
俺が、Aを縛るためのものや。」
少し荒々しい言葉なのかもしれないけど。
そう言ってくれる彼は本当に優しい。
「言うたやん。“最初から本気や”って。」
「・・・本当に、私でいいの?」
「Aでええんやなくて、Aがええねん。
絶対、俺が幸せにするから。」
「・・・これを書いたら、亮くんも幸せになれるの?」
「おん。」
出された言葉は、揺るがない真っ直ぐな言葉。
「・・・ありがとう。」
「泣かんでええやん(笑)」
気付いた時には、大粒の涙が零れ落ちていた。
亮くんは、優しくそれを拭った。
高校2年生の3月。
私は、一生の選択をする。
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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽｀*) (2018年5月16日 4時) (
レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております！ (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます（ ´∀｀）ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります！更新頑張って下さい＾＾ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なるせ* | 作成日時：2018年4月2日 19時
