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「亮ちゃんと俺等は住む世界が違う。それはAも分かってるやろ?」



大倉は本当に、何も知らないような顔して。

一番分かっているのは案外彼なのかもしれない。


優しくない彼は、もう甘えを許さない。

吐き出す言葉は、醜い現実。


夜が似合う私に、太陽のような亮くんは似合わないってことでしょ?

だから行かないで。って。

私だって分かってる。

だけど。



「・・・違うよ。」

「え。」

「大倉が私と一緒にいるのは、私が大倉に興味のない女だったからでしょ?」



4月初め。

亮くんに問われた大倉は、屈託のない笑顔でそう答えた。

もしそれが本当なら。



「貴方に興味を持ってしまった私は、一緒にいる価値はない。」



バランスはもう崩れている。

・・・ねぇ大倉、そうでしょ?

大倉は私をふわっと抱きしめた。








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「俺の傍におればええやん。」



そんなの気にしない。なんて。

あぁきっとこれが私が欲しかった温もり。

そして私が欲しかった言葉。

貴方の温もりが、声が、言葉が、瞳が、本当に好きだった。




私の運命の人は、大倉忠義。貴方だったのかもしれない。




だけど。

だけどね、大倉。

私は、私は______









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「・・・私、幸せになりたいの。」



抱きしめられていた腕から力が抜けた。







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今の大倉に縋れば、隣においてくれるかもしれない。

だけど大倉は一生私の方を見てくれない。

それは何となく分かっていた。

私は幸せになりたかった。

愛されて幸せになって、そして母親を見返したかった。


貴方無しでも私はここまで幸せになった。と。


それは自己満足の表れだし、理由としてはあまりにも醜い。

亮くんを利用しているだけかもしれない。

だけどそれでも。

それでも私は幸せになりたかった。

私を好きだと言ってくれたことが本当に嬉しかった。







.






それに。




「それに大倉は、私をモノとして傍に置いときたいだけでしょ?」

「・・・。」



それは私の欲しい愛のカタチではない。

“私”を求めているわけじゃない。

ただの独占欲の表れ。哀しいけれど、それが現実。

大倉は否定しなかった。









.









「・・・大倉ならきっと運命の人と結ばれるよ。」



だからもうこれ以上。

これ以上私の欲しい言葉を言わないで。

大倉には私と違って主役が似合う。

たとえ彼が輝くのが夜だとしても。

そんな彼には、自分の運命の人と結ばれる結末の方が正しいはず。



「A、変わったなぁ。」



呆れ果てた顏。

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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽`*) (2018年5月16日 4時) (レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております! (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます( ´∀`)ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります!更新頑張って下さい^^ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ* | 作成日時:2018年4月2日 19時

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