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気付いた後には、そりゃそうかと思いもしたけど。
案外この世界は狭い。
それにこの辺では最大規模の夏祭り。
たとえ、
_______出て行った母親がいたとしても、おかしくはない。
気付いたのは私の方だけ。
隣にいる男の顔なんて、もちろん見たことは無い。
着飾った母親の浴衣姿が、何となく自分に似ている気がして。
幸せそうに笑う母親に、嫌気がさした。
あの人は、私を捨てて幸せになった。
未練なんてない。
帰って来て欲しくもない。
ただ、あの人が私の母親。
その事実は永遠に消えない。
「・・・どうした?」
錦戸くんが私の顔を覗き込んだ。
少し潤んだ瞳には、私が映っているのか。
「・・・行くで。」
「え?」
問いかけたのも束の間。
錦戸くんは私の質問には答えずに、突然走り出した。
・・・私の手首を掴んで。
「ちょっと・・・。」
錦戸くんは自分のペースで走り続けた。
そもそも体力は劣っているうえに、下駄の私は付いて行くのがやっと、
というよりは半ば引きずられるようにして引っ張られた。
錦戸くんがようやく立ち止まったのは、
坂の上にある神社の境内。
坂は急だし、お祭りがあっているのは坂の下だから、もちろん人は誰もいない。
静かな境内で、二人の乱れた呼吸音だけが響いた。
「疲れた。」
「・・・わ、ごめん。」
一足先に呼吸を整えた錦戸くんは、我に返ったように謝った。
思わず恨みのこもった目で見てしまう。
でも。ふと思った。
錦戸くんは、どうして走り出したのだろう。
あの時私は何も言わなかった。錦戸くんも何も聞かなかった。
「・・・錦戸くん。」
「うん？」
「何でここまで走ったの？」
.
「・・・花火綺麗に見えそうやから。」
錦戸くんは嘘が下手だ。
だって知ってるわけない。初めて来たお祭りなのに。
それでも彼は嘘を付いた。
そしてその嘘はきっと、私の為。
だから。
「・・・そうだね。」
錦戸くんは驚いたように私を見た。
私は、笑った。何も言わずに、微笑んだ。
そしてその時。
お腹に響く音。輝く光。
「・・・綺麗やなぁ。」
錦戸くんが言ったことは案外間違いではなかったかもしれない。
夜空に浮かぶ花火は鮮やかで華やかで。
誰にも邪魔されない二人だけの空間。
ここは確かに穴場だった。
「・・・あ、大倉。」
「あ。」
「忘れてた(笑)」
嘘に彩られた夏。
花火で照らされた錦戸くんの笑顔はとても綺麗だった。
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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽｀*) (2018年5月16日 4時) (
レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております！ (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます（ ´∀｀）ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります！更新頑張って下さい＾＾ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なるせ* | 作成日時：2018年4月2日 19時
