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まんまと大倉の策略にはまった私は、

なんやかんやで夏祭りに行くことになった。

「・・・浴衣で参加。これ絶対条件やからな。」

そう半ば脅されて。



待ち合わせは19時。

5分前に行くと、錦戸くんはもう来ていた。

彼が着ていたのは、紺色ベースに黄色い帯が鮮やかな浴衣。

柱に凭れ掛かる彼は、まるでファッション雑誌の一コマのような。



「・・・錦戸くん。」

「・・・あ、えっ!?」



後ろから声を掛けると、ビクッと肩が跳ねて。

驚きすぎなリアクションに思わず笑ってしまった。

びっくりしたぁ。と息を吐いた彼は、それから私をまじまじと見つめる。



「・・・何?」

「いや、化粧とかするんやなって。」

「一応JKだわ。化粧ぐらいちょっとはするって。」

「そんなもん?」

「うん。」



頷くと、ふーん。と彼も頷いて。

そして訪れる沈黙。

・・・え、待って。超気まずいんですけど。

何となく気が付いてはいた。

錦戸くんは、人見知りだって。

実際、錦戸くんの友達を私は大倉以外知らない。

・・・この状況って、私が何か言うべきなのか?

いや、でも何を言う?

私が大倉が来ることを切実に願ったその時。



「・・・ってるで。」

「え?」



聞き取れなくて聞き返すと、

錦戸くんは照れ臭そうに頬を掻いて、

そして。




「・・・浴衣、似合ってるで。」




_______どうやら浴衣は、私に魔法をかけたらしい。


錦戸くんがそんな台詞を言うのが意外で。

だけどその台詞は、錦戸くんによく似合っている。

私は返答に困った。

よく分からない気持ちが、私の中を埋め尽くしたから。



「・・・なんか言えや。恥ずかしいやん(笑)」

「ご、ごめん。ありがと。」



一気に緊張が解け、私はバッと頭を下げる。

それと同時に「ごめ〜ん。」と間の抜けた声。

なぜだろう。すごくイラッとした。

そしてそれはどうやら、錦戸くんも同じだったみたいで。



「遅い。」「5分遅刻。」

「え、え!?二人してなんなん!?」

顔めっちゃ怖いって。そう慄く大倉。


・・・知るか、悪いのは遅れたお前だ。


「大倉、食べ物買って来い。私、林檎飴。」

続けて錦戸くん。

「俺、焼きそば。」

「ちょ、俺パシリ!?」

「「・・・・・。」」

「分かった、分かったから。せやからそんな睨まんといて。」


大倉はすぐに人混みに紛れていった。



「慌てとんなぁ、あいつ(笑)」

「ウケる(笑)」



錦戸くんとそう笑い合って、ふと視線を横にずらしたその時。



「________っ。」



息が、詰まった。

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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽`*) (2018年5月16日 4時) (レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております! (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます( ´∀`)ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります!更新頑張って下さい^^ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ* | 作成日時:2018年4月2日 19時

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