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7月。既に猛暑が続く日々。
うちの学校では、定期的に進路希望調査なるものを提出しなければならない。
配られた一枚の紙。これに生徒たちは未来予想図を描く。
正直私はこれを書くのが苦手だった。
昼休み。
「進路希望調査めんどいよなぁ。」
そう言ったのは大倉。
今日食べているのは、チョココロネ。
・・・それ、お前が言う？
「大倉は、“就職”で決まりじゃん。どこがめんどいのよ。」
「・・・まぁ、そうやけど。」
「え、大倉就職なん？」
あーそっか。錦戸くんは、知らないんだっけ。
ちらと大倉を見ると、何だか複雑な表情。
何となく、勘づいた。
「大倉は、家業を継ぐの。高校卒業したら、すぐ。」
「そーなんやー。」
そう言って焼きそばパンを頬張る錦戸くん。
興味はもう、大倉から逸れたらしい。
大倉の家は、この辺じゃ有名なお家。
お父さんが起業した会社は、今じゃ全国チェーン店。
大倉が家業を継ぐことは、あらかじめ決められていたようで。
・・・実際に本人がどう思っているかは、知らないけど。
「トイレ行ってくる。」
大倉はそう言って、立ち上がった。
・・・きっと、トイレには行かないんだろうなぁ。
大倉が出て行ったドアが、ガチャンと音を立てて閉まった。
空気を察した私は、意識的に質問の方向を変えた。
「・・・錦戸くんは？何て書くの？進路希望調査。」
「・・・夢があんねん。」
だから就職はしない。そう彼は言った。
“夢がある”そう言った彼の顔は、とても綺麗だった。
昔から憧れていた。
夢がある人が羨ましかった。
夢が叶う人なんて一握りだ。
夢を語る人は、私には馬鹿のように思えて、
その一方でその人は美しくて。
対照的に、私には夢が無かった。
自分の未来なんて、想像できなくて。
だから、何も言われないようにとりあえず“進学”と書いて。
「・・・夢。」
「ん？」
「夢、聞いてもいい？」
錦戸くんの夢は、きっとキラキラしている。
その夢に、触れたくなった。
錦戸くんは少し驚いた顔をして、そして照れ臭そうにこう言った。
「・・・俳優になりたいって思ってる。」
「・・・素敵だね。」
その言葉は、するりと出てきて。
やっぱり、錦戸くんはキラキラしてる。
「・・・叶うと思うよ。錦戸くんなら。」
錦戸くんは、驚いた顔をした。
私も、自分で言って自分で驚いた。
こんな無責任なこと、言うなんて。
「ありがと。」
そう言って笑った彼は、やっぱり眩しかった。
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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽｀*) (2018年5月16日 4時) (
レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております！ (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます（ ´∀｀）ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります！更新頑張って下さい＾＾ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なるせ* | 作成日時：2018年4月2日 19時
