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二人で教室に入ると視線が痛いほど刺さって。

それと同時にざわめき。



「・・・皆めっちゃ驚いてる(笑)」

「だね。」



・・・イメチェンの威力嘗めんな。

私の後ろに座った亮くんは悪戯っぽく笑った。
(結局二年になってから一度も席替えをしなかった。)

地味で冴えない女子が、二週間ばかりの冬休みを越えて変貌を遂げたわけで。

そりゃあ驚くよね(笑)

その間抜けな顔を見てほくそ笑む私は、性格が悪い。

そして驚いたのは、



「おはよー。


 ・・・・・誰?」



相変わらず遅刻ギリギリで登校してきた彼もそう。



「“誰”ってひどくない?」



言い返しながら、チクリと胸が痛んだ。

胸が痛むのは、マトリョーシカをやめた代償。

私の返しにアハハと笑いながら、

彼は何でもないようにその言葉を放り投げた。




「・・・Aと亮ちゃん付き合ってるんやって?」




瞬間固まる空気。

「そうだよ。」たった一言。それでいいのに。

返答に詰まるのは、やっぱり彼は私の中で“特別”だからで。

今私はどんな顔をしているんだろう。



「おん。」



そしてそんな私を救ってくれるのは、やっぱり亮くんだった。

彼も何でもないように笑顔で肯定する。



「そっか。」



笑顔の二人は絵になるほど美しくて。

思わず見とれると同時に、



なんだかとても恐ろしかった。



お互いがお互いを見ているはずなのに。

二人の視線はぶつかっているはずなのに。

二人ともお互いのことを見ていなくて。

でもお互い視線を逸らそうとしない。

亮くんは今何を思っているのか。

そして大倉は、


・・・大倉は今何を思っているのか。


見つめ合うこと数秒。

私にはもう、分からない。



先に視線を逸らしたのは。








.







「・・・A。」

「・・・え、あ、何?」



呼ばれて初めて自分が息を止めていたことが分かった。

「声カッスカスやん(笑)」

そう言って私を笑った彼は、こう続けた。




「今日、二人で一緒に帰らへん?」

「え。」




強調された“二人で”。

彼は知っているのだろうか。

彼は一体、私に何を求めているのだろうか。



「・・・ええよね?亮ちゃん。」

「お、おん・・・。」



ええよね?その言葉に、否定は許されていなかった。

亮くんが、気圧されたように肯定するのも仕方がない。



「ありがと。」



そう言ってふわっと笑う彼が、

私は怖くてたまらない。

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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽`*) (2018年5月16日 4時) (レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております! (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます( ´∀`)ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります!更新頑張って下さい^^ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ* | 作成日時:2018年4月2日 19時

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