金髪×ドラマー ページ5
.
「なぁ、付き合おう?」
「嫌。」
「ええーなんでぇ。」
「そういう顔してもダメ。いくらイケメンでも無理なの。」
こんな会話をしたのはもう何回目だろう。
私の隣で口を尖らせてビールを飲むのは、
違うバンドでドラムを担当している大倉忠義で。
私は、彼とはまた別のバンドでボーカルをしている。
なんでこんなことになったのかというと、
1年前に、同じライブハウスで共演する機会があり、
大倉曰く、歌ってる私の姿を見て一目惚れしたと。
・・・本当かどうか知らないけど。
「何でなん?俺モテる方やねんけどなぁ・・・。」
「自分で言う?それ(笑)」
「だってぇ、A全然振り向いてくれんねんもん。」
プクッと頬を膨らませて。
・・・確かに可愛いけれども。
「何で私なの?大倉なら他に可愛い子いくらでも付き合えるでしょ。」
「Aやないとアカンから、こんな必死やねん。」
「私じゃなくてもいいって。あんたのファン、可愛い子いっぱいいるじゃん。」
例えば・・・
「たぁく〜ん」って黄色い声を上げる、
ロックなんて全然わかってないような女とかさ。
「・・・じゃあ逆に聞くけど、何で俺はダメなん?」
「え。」
大倉がグラスを置いた。
「とりあえず理由聞かせて。それで納得したら・・・。」
「・・・諦める?」
「・・・・・かも。」
「“かも”かよ(笑)」
「むぅ・・・。」
「分かった分かった。理由言うから、言えばいいんでしょ?」
「おん。」
「理由は単純。バンドマンって遊び人が多いから。」
「・・・は?」
驚いたような低い声。
「だって大倉、見るからにそうじゃん。
イケメンで金髪でピアスつけててドラマーなんて、
・・・私の事、絶対捨てるでしょ?」
「・・・そんなん、分からへんやん。」
「・・・え。」
急に真っ直ぐこちらを見つめる瞳。
心をギュッと掴まれたような感じがして、ドキッとした。
「何事もやる前から決めつけたらアカンと思うで?」
「いや、でも・・・。」
「じゃあ、試してみようや。」
「試す・・・?」
何を?という言葉は発せられることは無かった。
スッと長い指で掬い上げられた顎。
近付く顏、絡まる視線、煌めく瞳。
私は、動けない。
近付く大倉が、フッと笑ったのが見えたすぐ後。
唇が重なった。
「・・・どう?分かった?」
「・・・分かる訳、無いでしょ。」
「フフ(笑)じゃあ、もう一回試す?」
「・・・・・・試す。」
結局私は、この男に堕ちたのか。
end.
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作者名：なるせ* | 作成日時：2018年5月16日 4時
