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『一段と霧が濃くなってる』
湿原を包み込む濃霧のため、視界が狭くなっていく。いつの間にか後方集団と離れてしまい、気配すら感じられない。
仲間思いなゴンは、後ろを頻繁に確認していた。
「ボヤッとすんなよ、人の心配してる場合じゃないだろ」
確かにキルアの言う通りである。霧で目の前を走る受験者すら姿が霞んでいる。気を抜けば自分たちが危ない。
そのとき__
「ってぇーー!!」
「!!、レオリオ!!」
『ゴン!!』
後ろから悲鳴が聞こえた。直感でレオリオのものだと認識する。ゴンは元来た道を迷いなく走っていく。
ゴンを追いかけようとAも方向転換する。が、キルアに手首を掴まれ進むことができなかった。
…………違う、キルアのせいじゃない。脚が動かなかった、動けなかった。私、ゴンを、それにレオリオまで見捨てようとした。
「Aも行くのかよ」
『ぁ……』
「バカか!? お前、今行けば戻ってこれねぇぞ。……ゴンならきっと大丈夫さ」
キルアの声によってAの思考は現実に引き戻された。
私は
今から私が手伝えることは多分ない。それなら、私は__
『ゴンを信じるよ』
今度は真っ直ぐとキルアの目を見た。
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最初、あいつ_Aに話しかけたのは、年が近そうってだけの気まぐれだった。第一印象は緊張感ないし気弱そうな奴。男だらけの巣窟だというのに、すやすや眠る姿に呆れた。隣に座って殺気を放てば、Aを見ていた受験生は逃げるように去っいった。どうせ一次試験で落ちるだろうし、放っておけば良かったんだ。でも、
『ゴン!!』
「!!」
キルアはゴンを追いかけようとしたAの手首をとっさに掴んでいた。その行動に一番驚いたのはキルア自身だろう。服の裾が軽くなった瞬間、体が勝手に動いていたから。
「行くのかよ」
Aの目には戸惑いの色が見えた。キルアはそれに付け込むように言葉を重ねた。
ゴンならきっと大丈夫__Aを止めるために言った言葉は、キルアに重くのしかかった。この濃霧では戻るのは至難の技。きっとAもそのことを分かっている。
けれど、Aはゴンを信じると言って笑って見せた。
自分と"正反対"な少女。キルアは心の片隅でその姿に憧れを抱いていた。
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冬瀬(プロフ) - 作者です。誤字等、まとめて修正しました。 (2022年3月5日 9時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 妄想癖さん» 質問ありがとうございます!光の加減で、白色(限りなく無色透明)に見えるイメージです(言葉にしがたい)。光の反射とかで頭皮は見えないはず 笑。。「宝石の国」のキャラクター達みたいな感じです(気になる方は調べてみて) (2021年2月16日 13時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
妄想癖(プロフ) - 無色透明ってことは禿げて見えるんですか?! (2021年2月8日 0時) (レス) id: 36f953a85d (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 作者です。ちまちま修正中。 (2020年2月27日 23時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
しらほ(プロフ) - フォスさん» きっとトプ画のことですね??多分。一言添えていますがトプ画は雪兎様に描いて頂きました。とても可愛いですよね!! (2019年2月24日 23時) (レス) id: 5f12e77188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬瀬 | 作成日時:2018年8月15日 19時