出発の日 ページ3
287期ハンター試験前々日＿＿
『それじゃ、いってくるね』
Aは靴の踵をトンと鳴らすと、振り返って背後に立つ青年＿シャルナークに向かって言った。
「A、今年の会場見つけといたよ」
『ありがとう！シャル』
シャルナークから受け取った紙にはザバン市内の地図と会場の住所が書かれている。
ハンター志望者に配られる通知には試験開始の日時と大雑把な場所だけしか記されていない。そのため、僅かな情報を頼りに会場にたどり着かねばならない。
そんな志望者達を狙って金目当てか嘘の情報を教える輩も多いのだが、Aはシャルナークのことを信用していた。
Aがシャルナークと出会ったのは一年前。両親を殺され行き場を失っていたところを助けられた。Aにとって、彼は実の兄のように大切な存在だ。
「そういえば」
『ん？』
「毎年新人潰しを目的に試験を受けてる奴がいたと思う。確か……トンパ、だったかな」
『一応覚えとく！』
Aのあっけらかんとした返事に、Aなら心配いらないか＿と笑顔を見せるシャルナーク。
といっても、シャルはいつも笑顔を絶やさないのだけど。しかしそんな彼が実は
『ぁ……』
「どうかした？」
『……シャル…………また会えるよね？』
シャルが私の面倒を見てくれるのはハンター試験までという約束だった。
このアパートも彼にとっては只の仮宿、旅団員ともなるときっと居場所の痕跡も残さない。今後、シャルには会えないのかもしれない＿＿そんな不安が頭によぎった。
「まぁ……」
これ以上オレに関わらないほうがいいし＿＿独り言のように続けられた言葉に、Aは悲しげにうつむいた。その様子に見兼ねたシャルナークはAの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「もう、そんな寂しそうな顔しないでよ！"試験で友達作るんだ"って張りっ切ってたでしょ。また会えるからさ、ほら笑って！」
『ほんと!?絶対だよ！』
シャルナークの言葉を聞き、Aは喜びを頬に浮かべた。
.
『いってきます！』
そして、Aは外に大きく一歩踏み出した。
.
「……Aにとってオレはお兄ちゃんなのか。あーあ、唇の一つでも奪っときゃ良かったかなぁ」
シャルナークは小さくなったAの後ろ姿を愛おしそうに見つめた。
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冬瀬(プロフ) - 作者です。誤字等、まとめて修正しました。 (2022年3月5日 9時) (
レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 妄想癖さん» 質問ありがとうございます！光の加減で、白色(限りなく無色透明)に見えるイメージです(言葉にしがたい)。光の反射とかで頭皮は見えないはず 笑。。「宝石の国」のキャラクター達みたいな感じです(気になる方は調べてみて) (2021年2月16日 13時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
妄想癖(プロフ) - 無色透明ってことは禿げて見えるんですか？！ (2021年2月8日 0時) (レス) id: 36f953a85d (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 作者です。ちまちま修正中。 (2020年2月27日 23時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
しらほ(プロフ) - フォスさん» きっとトプ画のことですね？？多分。一言添えていますがトプ画は雪兎様に描いて頂きました。とても可愛いですよね！！ (2019年2月24日 23時) (レス) id: 5f12e77188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬瀬 | 作成日時：2018年8月15日 19時
