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「時雨、時雨!確りしてくれ!」
「ごめんなぁ、やっと、一緒に居れるって思うたのにから」
血溜まりのなか、弱々しい笑みを浮かべる時雨
柄にもなく涙を貯める太宰。
その涙を、血の付いた手で掬う。
「泣かへんの。男の子やろ?泣いたらあかん」
「無理に、決まっているだろう?」
頬に添えられた手を握り、訴え掛ける。
だが、流石の太宰でも気付いていたんだ
─もう、彼を助ける手立てはない。─
「治、最期に、一回でええ。名前、呼んでや」
「っ、時雨…!」
「ふはっ、ワイ、この名前になって、良かったわ
治に会えて、ほんまに良かったわ。ありがとうな」
徐々に冷たくなる時雨。
太宰には、どうすることもできない
「じゃ、さいならや。治。幸せに、なるんやで」
パシャ...
ふ、と力が抜ける時雨の手。
跳ねる血が太宰の頬に飛び散る。
ボヤける視界の中、時雨の傷口にアイビーの花を見つける
いつか、時雨から聞いたことがある。
ーわいが好きなんはアイビーやな。
花言葉は“永遠の愛”。って、女々しいかwー
もう聞けぬ、時雨の声が頭に響く。
それにまた一つ、涙が零れた。
「うん、私も、君を永遠に愛すよ。
幸せをくれて、ありがとう。この花は、大切にする」
アイビーの花に、雫が零れた。
一粒、二粒、いや、数え切れないくらい沢山の雫が…
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作者名:仮面の少年 x他1人 | 作成日時:2016年3月8日 23時