34 N side ページ34
大野さんの姿が完全に消えて無くなったのを見届けてから。
ふぅ、と大きくため息をつき全身から力を抜く。
今日も嫌われずにすんだ、と安堵する気持ちと。
良い子で待っていろという言葉に刃向かうことへの恐怖感が同時に押し寄せてくる。
でも……とりあえず気がつかれずに済んでよかったかな。
すっかり真っ暗闇に包まれた校舎内を、ファータの灯してくれる光を頼りに進んで。
寮までの鬱蒼とした木に囲まれた道をトボトボと歩く。
昼間はちょうどいい影を作ってくれる並木道だけれど、夜は少しおどろおどろしい印象を与えるせいか、外に出歩く生徒は少なくて。
ファータを隠す必要も無いから俺にとっては非常に有り難い。
それに……夜の闇なんてもう慣れちゃったよ。
回数はあの人の気まぐれだけれど、週に１度は必ず仕事へと向かわされるから。
『カズさま、少しお疲れですね……』
「あぁ……うん、でも居てて」
確かにファータを取り込んで自分で光を出す方が体力の消費は少ないだろう。
同じ事を考えていたらしい賢い妖精が消えていこうとするのを引き留めて、指の上に彼女を止まらせる。
安心するんだ……コウがいると。
それが光の能力だと言ってしまえば終わってしまう話なのだけれど。
それだけじゃない何かがコイツにはあると心の何処かで信じている。
ずっと一緒にいるからかな。側に居てくれないと少し落ち着かない気分になるんだ。
そんな俺の気持ちを汲み取ってくれたのか、ふわりと微笑んだ彼女は。
柔らかな明かりを少し強くして、辺りを舞わしている粉で絵を描くように色んな形を作り始めた。
『智さまがいらっしゃらないのですから。今夜はしっかりお休み下さい。お許しが頂けるのならずっとお側にいます』
「……いいよ、許可する」
人間よりも、よっぽどファータの方が信用できる。
今日はゆっくり眠れそうだ……そんなことを考えながら、寮の一室の扉を開けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 572人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まぁや(プロフ) - 天和さん» こんばんは！ついに1章の間に紫さんが登場することは適わず…(失笑) 出会いをとくに慎重に書きたいが為の策です、ご了承下さいませ…。精霊さんとニノさんの間にある信頼関係、感じ取って頂けましたでしょうか？2章もぜひぜひ！楽しみにして頂けると嬉しいです^^ (2014年4月5日 20時) (
レス) id: a8436af674 (このIDを非表示/違反報告)
天和(プロフ) - まぁやさんこんばんは(^o^)/全く現れないじゅんくんに、こちらまでドキドキです(笑)にのちゃんの精霊？さん、どうしたんでしょう。たくさんの思いが交差してますね…続き、楽しみにしてます！ (2014年4月3日 23時) (レス) id: c779d7d0d2 (このIDを非表示/違反報告)
まぁや(プロフ) - 和希さん» 初めまして！コメントして下さりありがとうございます！二宮さんは担当様ということもあり、特に気をつけて書いてるので、そう言って頂けて本当に嬉しいです^^ 和希さまに楽しんで頂けるよう頑張りますね！ (2014年3月26日 23時) (レス) id: a8436af674 (このIDを非表示/違反報告)
まぁや(プロフ) - あびさん» ありがとうございます！気に入って頂けて嬉しい限りです(*^^*)さすがあび様！観察眼が鋭くていらっしゃいますね(笑)その通り、今回最も活躍するのは頭脳明晰なあの方だと思ってます♪ (2014年3月26日 23時) (レス) id: a8436af674 (このIDを非表示/違反報告)
和希 - 初めまして！以前から、まぁやさんが書く二宮さんはとても綺麗で大好きでファンでした！！続き楽しみに待ってます！ (2014年3月26日 14時) (レス) id: ece69d2262 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まぁや
作成日時：2014年3月19日 20時
