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 「ところで、二人はなんで知り合いなの?」



 中村や松田の四人でテーブルを囲んでいる時、松田がヴィルキンスと中村に質問を投げた。
 すると、先ほどまで忙しなく箸を動かしていた柳田は電池が切れたかのように動きを止める。大事なことをようやく思い出したようだ。中村とヴィルキンスはきょとんとした顔をしてお互いの顔を見合わせる。

 「あー。俺の高校の後輩がヴィルの幼馴染みで」

 『確か、晃さんが高三の時に何回かお会いした事があったのかしらね』

 懐かしいわね、と微笑むヴィルキンスの顔をデレデレと柳田は眺めた。頬につく米粒の存在には気づいていないようだった。

 「いやー、でもまさかね。俺達がチームメイトになるとは想像もしなかったよ」



 『まぁ、確かに。でもアタシはケンちゃんから晃さんのことよく聞いていたから。いつかプレイを間近で見たいと思ってたわ』



 ピタリ、と。先程まで鼻の下を伸ばしていた柳田が男の名前であろうワードに気づき、冷や汗をかきはじめた。内心穏やかではないのであろう。

 「け、けんちゃん? A、ケンちゃんって? 誰?」

 そんな柳田の心中も知らずにヴィルキンスは小首を捻る。



 『あら? 言いませんでした? アタシの幼馴染み――』



 嬉しそうに、正に花も綻ぶ笑顔でヴィルキンスはそう宣った。そして、『あぁ、早く会いたいなぁ』と付け足したのである。

 「ぇえええええええええええ!!!!!」

 「ギータ! うるせぇぞ!!」

 福岡ソフトバンクホークス春季キャンプ地にて、ギータの叫び声がこだましたのであった。開幕戦まで二十日を切った、春の昼下がりであった。



 某所

 「へっくし!!!」

 とある某所にて、一人の男が盛大なくしゃみをしていた。

 「うわ!! 拳士さん、まさか風邪っすか?」

 「うーん、そんなことないんだけどなぁ。誰かが噂してんのかな?!」

 へへ、と笑う男に対し直ぐ近くを歩いていたもう一人の男が呆れたようにため息をついた。

 「んなアホなこと言うとらんで、さっさと準備してくださいよ。ほんま鈍臭いんやから」

 そう言うと相手の分まで荷物を持ちさっさと歩き出し始めた。

 「え、待って遥輝! 自分で持つから!」

 慌てて追いかけるその表情は少し寂しそうに見えた。

 波乱の試合までもう少し――。

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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時

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