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 御伽噺





 小さい頃に憧れた御伽噺のお姫様は、それはそれは綺麗な靴を履いていたっけ。それに憧れていくつもの店を回ったけどアタシに合うものは、見つからなかった。

 大人になってからは探すことさえもやめてしまって、今はもう諦めている。お姫様になれるわけないって。でも――。



 「おひぃさん」



 大好きなあの人は、今もアタシをそう呼んでくれる。









 月日が流れるのはあっちゅう間で、鶴岡さんはAのだぁいすきな幼馴染、小憎たらしい杉谷のおる日ハムに戻り、俺はシーズン中やというのに肘を故障した。

 まぁ、Aの献身的な支えと、俺の努力で無事復帰をしたからそこは万事解決!



 「パートナーシップ?」



 ロッカーでAの帰り支度を待ちながら資料を読んでいると、後ろから内さんが覗き込んできた。

 「しーっ!」

 キョロキョロあたりを見渡すが、どうやらAはまだシャワー中らしい。
 安堵のため息を吐く俺の前に内さんとマッチさんが座り込み、いつの間にか晃と秀平もその身を寄せて来た。

 「へぇ、ついに?」

 「っす……もうそろそろ、ええ頃かと」

 「あのギータがねぇ! 俺、涙出てくるわ」

 マッチさんが出てもいない涙を拭う。でも、みんなの目はからかいの目じゃのぉて、とっても優しい目をしてるからむず痒くなって、俺も照れ笑いを溢した。



 こんなに誰かを一途に想うことも、誰かのことで悲しかったり嬉しかったり、それを感じる事が幸せだと思えたことも初めてやった。



 今更A無しの人生なんて……そんなの、想像できん。



 「計画は?」

 「それは念入りにしたっす! A、喜んでくれるとええけど。実は――」



***



 俺達の出会いはホームグラウンド(ここ)だった。練習も終わり帰り支度を済ませたAの手を引き、駐車場とは真逆の、グラウンドへと向かう。
俺の手には、最高のプレゼントを入れた袋がぶら下がっていた。


 灯りの消されたグラウンドの真ん中に二人で立ち、モニターから流れる映像を眺める。

 チームの人らや、スタッフに協力を得て集めた写真や動画。編集とかはそんな細かい作業は苦手やけぇ、和子さんにほとんど任せてしもぉたけど。

 「記念日、やけぇ」

 『悠岐さん……ありがとう!』

 目をキラキラとさせるAに俺の口角も自然と上がる。Aはやっぱりすごい。Aの言葉や行動が、俺を一喜一憂させるんやから。

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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時

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