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朝起きると目の前に厚い胸板と、少しだけ視線を上に上げると少しだけ生えた髭が見える。
それがなんだが面白くて、くすりと笑うのが密かなワタシの1日の始まりだ。
昨夜はアタシの家に泊まった悠岐さんのために、とびっきりの朝食を作ってあげよう。
好きな人と同じ家で過ごせる事がこんなに嬉しいなんて、知らなかったわ。
Aの家のベッドは広い。俺の家のものより広いし、まず家もいいところに住んじょる。一人暮らしが長かった俺は家にこだわりがなく、どうせ帰って寝るだけの場所やと思ってたから。
俺と正反対にAの家にはこだわりがある。日あたりの良さや、間取り。その他にも、セキュリティから治安の良さ、近所にあるお気に入りのスーパーやケーキ屋。
でも、最近は誰かさんの影響もあって考えが変わって来た。誰かと同じ家に帰る楽しさと、誰かが家にいる嬉しさを知ってしまった。まぁ、誰かじゃなくて、Aじゃないといかんけどな!
「んぅ…A?」
目が覚めると昨晩腕の中に閉じ込めた恋人がいなかった。のそのそと起き上がりリビングへの扉を開ける。Aはいつだって、俺より少し早く起きて――。
『悠岐さん、おはよう』
エプロン姿で美味しい食事を用意して待っていてくれるのだ。
エプロン姿で(ここ大事)。カウンター越しに笑いかけてくれる姿が眩しい。
「Aー」
『ふふ、くすぐったいわ』
引き寄せられるようにAの後ろに周り、その身体を抱きしめた。同じシャンプーを使ってるのに、Aは甘すぎない花の匂いがする。つむじに鼻を埋め堪能すると、やっと目が冴えてきた。
「うーん、やっぱりこれがなきゃ無理やー」
『え?』
「お泊まりせんかった日は調子が悪いけぇ」
俺は身体を抱きしめながら、いやいやと首を振る。もうそろそろ――。
「一緒、住みませんか」
一瞬の間を置いてAが笑い出した。その身をくるりと器用に動かし、俺に抱きついてくる。
ぎゃ!! かわええ!!
『ふふ、なんで敬語なのよ』
「緊張してんもん! もぉ! 笑わんで!」
『ふふ、よろしくお願いします』
頬を染めながら俺を見上げるAは、やっぱり言葉に表せないくらい可愛かった。
『今度のオフに引っ越ししましょうか』
「入ったらすぐ!」
『ふふ、すぐね』
「『素敵な家にしよう』」重なった言葉に笑みが溢れた。
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時