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タチが悪い
アタシの恋人には困った癖がある。アタシの知らぬうちに印をつけるのだ。きっと私の寝てる間に。最初はホークスの公式グッズで自身のトレーナーやらTシャツやらを着せることから始まり、今では人から見えるか見えないかの所にキスマークをつけるようになった。
「だって、俺のAじゃけぇ」
なんて、拗ねた顔で言われたら怒るに怒れないからタチが悪い。
――あ、このパンツ初めて見るのぉ。今度の遠征はこれを借りていこう。
ここだけの話、俺は定期的にAの下着を拝借してはお守り代わりにしちょる。未だAにはバレちょらんはず。
『やだ!! なに人の下着をマジマジ見てるのよ、変態』
ぽこ、と背中に衝撃を受け振り向くと眉間に皺を寄せたAがこちらを顰めっ面で見つめていた。そんな顔もかわえぇ。
「ふふ、すまんすまん。もう終わるけぇ、座ちょって」
『そう? コーヒー入れとくわ』
「さんきゅ」
どうじゃ、この新婚っぷり。ま、ファンからも認定されてる夫婦じゃけぇのぉ。付き合って半年近くなるが未だにラブラブやけぇ。
夜は無理させちょるのも分かっとぉけど、制御が効かんくなるのは俺だけの所為じゃない。魅力的なAにも責任ある。身体をしんどそうに動かしてるのは昨晩の代償だ。俺の背中にもいくつか引っ掻き傷とアザがあるだろう。
『はい、どーぞ』
「さんきゅー」
ソファーに座るとAは少し離れた位置に座ろうとするから、その腕を掴み横に座らせる。腰を摩るとピクリと動くからたまらない気持ちになる。
『んぅ』
「痛い?」
『ううん、大丈夫……ねぇ、触り方いやらしくないかしら』
「だって久しぶりの休みじゃし?」
『ばか』
ぽすん、と頭突きするように俺の肩に額を擦り付けてくる。
「ダメ?」
Aは俺の顔をじっと見つめたかと思ったら立ち上がり俺の膝に向かい合う形で座った。珍しく大胆な行動に驚きで思考が止まる。
「え、A――」
『黙って』と俺の唇を塞ぐのは、Aの柔らかいそれだった。拙い動きがまた可愛くて、いやらしい。俺の下唇を咬むと、額と額を擦り合わせてくる。
『明日移動日だし、ほどほどにしてね』
頬を染めながら言うもんだから、俺の箍は完璧に外れた。どこまでも俺を虜にして離さないからタチが悪い。
「明日は俺が抱えて行っちゃるけぇ」
翌日、首元のキスマークに怒られた。
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時