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『……皆でご飯は食べた方が美味しいでしょ？ それにそこまで心配するようなことはないわ』
ヴィルキンスがやんわりと男の手を離そうとするが、思いの外力が強くなかなか外れない。むしろ、だんだんと強くなっていく力にヴィルキンスの整った顔が苦悶に歪む。
『痛いわ、離してちょうだい』
「なんで、なんで……足りなかったですか？」
『え？』男の言葉にヴィルキンスが相手の顔を見る。俯いて表情までは分からなかったが、その広角が歪むのが見えた。
一瞬の出来事だった。
男はヴィルキンスの脚を払い、柔らかい人工芝にその身体を押し倒した。突然のことであったがヴィルキンスは瞬時に受け身を取り負荷が掛からないようにした――が、その隙に男はヴィルキンスの仰向けになった身体に馬乗りになる。
『どいてちょうだい！』
「どうして！ 伝わらない！ こんなに、こんなに！ きみのことが好きなのに！！」
男の告白でヴィルキンスは呆気に取られるが、これまでの自身への被害を思い出し、全てのことが線となって繋がったことでその表情を歪ませる。
『……全部、貴方の仕業だったのね』
「最初はヴィルキンスくんが少しでも弱ってる所に漬け込めたら、それで良かったんだ。なのにきみときたら、弱ったところも見せない。強情だよね」
男はヴィルキンスの声が聞こえないのか、淡々とヴィルキンスへの愛を吐きはじめた。男の態度にヴィルキンスは冷や汗が流れ始める。それと同時に、なんとも言えぬドロドロとした気持ちが抑えきれなかった。
『ものすごく、不愉快だわ』
その言葉に男は口を閉じ、じっとヴィルキンスの顔を見つめる。そして、不気味に微笑む。
「その表情もすごく素敵だね。でも――快楽に歪む表情はもっと素敵なんだろうね」
男はヴィルキンスのユニフォームに手をかける。ヴィルキンスは、はっ、としてすぐさま男の腕を掴むが体勢が悪く本来のように力が入らなかった。
『やめて！ いや！ 誰か！！ っ、やな――』
視界が滲む。ヴィルキンスの思考には大好きな杉谷や、中村達チームメイトが浮かぶ。そして、なぜだろうか誰よりも強く思い浮かんだ男。無意識にその名を紡ごうとした、その時。
「俺のAに何しちょるんじゃぁああああ！！！」
ヴィルキンスの蜂蜜色の瞳から滴が零れ落ちた。
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作者名：ペリー | 作成日時：2020年8月5日 2時
