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「なんや！ これ！！」
ロッカールームに福田の声が響く。ヴィルキンスは慌ててその口を手で塞ぐが、時すでに遅し。其の声に気づいた柳田は三人を振り返りヴィルキンスと福田の距離の近さに憤慨する。ヴィルキンスが柳田に気を取られているすきに中村はロッカーの様子を確認した。中村に続いてその中を見た内川や松田も絶句した。
バッグの中身が散乱し、ヴィルキンスの下着は明らかに汚されていた。落ち着いた柳田がやっとヴィルキンスのロッカーの中を確認し、その顔から表情が消える。ヴィルキンスの汚された下着をガッと掴むとコンビニの袋に突っ込みゴミ箱に叩き込んだ。その並々ならぬ様子に松田達は顔を蒼くさせる。
「ぎ、ギータ？」
「……ろす」
恐る恐る福田が柳田に声をかける。ボソボソと話す柳田に皆が耳をすませる。
「ぶっ殺す」
あ、犯人死んだ――ホークスメンバーの心がいつも以上に一体となった瞬間である。
数日後、いつも通りホームで試合を終え居残り練習をしようとヴィルキンスはひとりグラウンドに残っていた。
あぁ、バレてしまった――自分でどうにかしようとした矢先、先輩達にバレ、気を使わせてしまったことを心中嘆く。
なぜアタシなのだろう。好意なのか、憎悪なのか。姿を現さない犯人に、ヴィルキンスの心は疲れてきていた。
「ヴィルキンスさん」
名前を呼ばれて後ろを振り返る。いつの間にか、男性職員がヴィルキンスの背後にいた。最近入って来たというこの男は、人の良い笑顔を浮かべヴィルキンスにもよく声をかけてくれていた。
『あ、ごめんなさい。何かしら？』
「いや、なんだか浮かない表情をしていたから……心配で」
『疲れがたまってるのかしらね。今日も激戦だったから』
これ以上誰にも悟られまい、とヴィルキンスは表情を作る。
「……そうですか。もしも、何かあれば話くらいは聞くので！ 愚痴でもなんでも！ そうだ！ ご飯でも行きませんか？ 気分転換に」
いつになく積極的な男に、ヴィルキンスは苦笑する。
『どうせなら皆で行きましょう』
まだ誰かしらロッカーに居ると思うので、そう言いながら男の横を通り過ぎようとした。その時、ヴィルキンスの身体が引っ張られる。後ろを振り返ると、男がヴィルキンスの腕を掴んでいた。思わぬその行動にヴィルキンスは振り返る。
「……僕じゃ、頼りないですか」
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作者名：ペリー | 作成日時：2020年8月5日 2時
