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『お久しぶりですね』
笑みを零すヴィルキンスは、中村の記憶に留まっている頃よりも大きく成長していた。
『改めまして、ヴィルキンスAです。これからよろしくお願いします。晃さんって呼んでもいいですか?』
「おう、俺はヴィルって呼ぶな。いやまさか、此処で会うとはな」
『ほんと! アタシもびっくり。ケンちゃんが晃さん晃さんって呼ぶもんだから覚えてたけど、まさかこんなところで再開するだなんて』
懐かしい高校時代を思い出しながらヴィルキンスがゆっくりと中村の背中を押す。
中村もまた当時高校三年の頃を思い出していた。後輩が可愛がっていた幼馴染み、まだ中学生のヴィルキンスを連れてきたのがまるで昨日のようだった。当時のヴィルキンスは背丈一七〇程で筋肉も今よりなく、正に少女のようであったと記憶していた。その当時もオネエという事に衝撃を受けたのが懐かしい。
今では体躯は程よく筋肉がついており、背丈も一八〇を少し超えた位だという。美丈夫とは彼のことを言うのだろう。恐ろしいほどに美しい男だな、とストレッチを交代しながら中村は素直にそう思った。
『晃さん、教えて下さい。ケンちゃんのこと』
「ん? あぁ、変わらないよ。この間だって―――」
ヴィルキンスは熱心に中村の話を聞いていた。ひとつも聞き漏らさんとばかりに。時折、幼馴染の姿を思い浮かべては楽しそうに笑った。
後ろの方から痛いほど視線を感じる。分かっている、この視線は奴しかいない。朝礼後もしつこく尋ねてきては肩を激しく揺すり、見兼ねた内川に頭を叩かれていた。
中村は少し考えた後、はぁ、とため息をつき振り返って手招きをした。
「ギータ」
パァっと嬉しそうに喜ぶ姿は正に大型犬だな、と中村も三人を遠巻きに見ていたチームメイト達も、そう心の中で呟いたのだった。
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時