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休み時間になると杉谷はヴィルキンスの教室に入り、ヴィルキンスと談笑していた。すると、クラスメイト達がガヤガヤと二人の下へと集まって来た。
「ねー! きみってがいじん?」
『ううん、ハーフだよ。フランスと日本』
「そのシャツかわいいねー。ふりふりの!」
『ありがとう、ママのてづくりなの。』
教室の後ろで我が子達を見守っていた親達や担任の女性は、子供達の姿にその表情を緩めた。杉谷もヴィルキンスに友達ができることを心から喜んだ。
「ねぇねぇ」
「ヴィルキンスさんじゃないのー? なんでヴィルキンスくんなの?」杉谷はヴィルキンスのクラスメイトである、自分より少し小さい女の子の発した言葉が一瞬理解できなかった。
『アタシ、こころは女の子だけどからだは男の子だからじゃないかな』
Aの発言にクラス中が静まり返った。事情を把握している担任の女性はあたふたとしており、教室の後ろにいた親達もざわついていた。
「えー! なにそれへんなのー!!」
子供というのは時に残酷であり思ったことをそのまま口にしてしまう。咄嗟に杉谷はヴィルキンス見た。困ったように眉を下げる彼は、杉谷にはとても悲しそうに見えた。
「男の子なのにふりふりなんてダメだよ!!」
「うるさい!!」
杉谷の大声にクラス中が静まりかえった。普段から笑顔の絶えない杉谷の大声にヴィルキンスまで肩を震わせ、呆然と彼を見つめる。
「Aが何を着てもいいだろ! お前らに関係ない! Aはかわいいんだから!! 何着てもにあうんだ!!」
「ゴメンナサイ!」
「そんな謝らないで! 私の息子が男になった瞬間よ。リリーさんがビデオ回してくれてて良かったわ。」
ヴィルキンス母と、担任に呼び出された杉谷母が談笑しながら家路までを帰っていた。
杉谷は母親に拳骨を喰らった。その表情は俯いて見えないが拗ねていた。
『ケンちゃん、だいじょうぶ?』
「……ん」
『ケンちゃん、ありがとう』
「……ん」
『ケンちゃん、だいすき』
「……ん?!」
杉谷はバッと音がつくほどの勢いでヴィルキンスを見た。
『ケンちゃんすきだよ。アタシ、ケンちゃんのことだーいすき!』
ボケっとしたあと杉谷は顔を赤らめ、ヴィルキンスの好きな笑顔を見せた。コロコロと鈴を転がすように笑うヴィルキンスの手をギュッと握りしめる。
「ぼくもだいすきだよ!!」
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時