オネエですが何か問題でも？(Sh9)（本編完結） (ページ16)

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　柳田が今宮と共に帰るのを更衣室からこっそり見送った内川は、大きなため息をついて松田に向き直る。

　「もー！どうすんのマッチ！！」

　「え？！なるようになるだろ！」

　「なんて無責任な！！！」

　批判の目で見つめる内川に対して、うーんと唸った松田は、ガシガシと頭を掻きベンチに腰を下ろす。

　「あいつさ、良くも悪くも一途だろ？野球見てると分かるじゃん。自分の好きなものには一直線！って感じの」

　「そりゃあ、野球には真っ直ぐだろうけど。過去の恋愛であいつ自身やらかしてたりしてるじゃん」

　着替え終わった内川も松田の隣に腰掛けて、柳田のこれまでを思い出して苦い顔をする。

　「その元彼女も含めだけど、全部女から言い寄ってきたって知ってた？」

　「……ん？？」

　「だーかーらー！ギータから好きになった事ないんだよ。と言うか、ギータが好きだったかも怪しいけどな」

　内川は知り得る全ての柳田の過去の女を思い出し、唖然とした顔で松田を見つめた。思い当たる節があるようだった。

　「……うわぁ、マジだ」
　

　柳田は一人の美女と個室で酒を酌み交わしていた。今宮とクラブに来たのはいいが乗り気になれずフラフラと歩いている内に、いつの間にか此の美女が隣にいたのだ。名前は先程名乗っていたがとっくに忘れてしまっていた。
　女が話す度に唇のルージュがてらてらと光る。とても魅力的なのだろうが、こんな時でも思い浮かべるのは一人の後輩だった。

　「(その色Aに似合うじゃろなぁ。A何しちょるんじゃろ。今日あんまし話せなかったけぇ会いたいなぁ)」

　そんな事を柳田が考えていると、いつの間にか女が目と鼻の先までやってきており、その指先が柳田に触れた。
　柳田と女の目が混じり合う。女は妖艶に笑うと、ゆっくりと柳田を押し倒して、二人の影が一つに重なった。

　女が覆い被さってくる時でも柳田の心を占めるのは一人の青年だった。

　「(A―――)」

　翌日、内川と松田が更衣室に着くと既に柳田が着替えを終えてグラウンドに向かおうと準備をしているところだった。

　「ちゃす！」

　「おはようさん」

　「おはよ！それで！？どうだった昨日は！」

　オブラートに包まぬ松田に内川も慣れてるのか苦笑いである。止めないところを見ると、内川もまた気になっているのだろう。
　当の柳田はキョトンとして、昨日？と呟いている。