オネエですが何か問題でも？(Sh9)（本編完結） (ページ12)

今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:24,215 hit

５ページ12

.

　三回の表、日ハムが先制点を奪った。それに負けじと四回の裏、ホークスも一点を返す。
　そして、七回表の現在。ワンアウト、ランナー二塁でバッターは一番、西川。西川の打った球は見事にレフト方向に打ち上がった。誰もがスタンドに入ったと思ったその時、レフトで補給状態にいたヴィルキンスがフェンスに身体を打ちつけながらもジャンピングキャッチをしたのだった。

　これには実況もベンチも驚きを隠せなかった。しかし彼は着地と共にその見た目からは想像もつかないような強肩を見せた。レフトからバックホームに向けての、正にレーザービームと呼ばれる豪速球を投げたのだ。
三塁走者はそのままタッチアウト、ゲッツーでスリーアウトチェンジとなった。

　「いやー、今の見ましたか？まさにイチロー二世ですね。謎の多い選手ですが、いかがですか？」

　「二世ですね！ヴィルキンス選手、アメリカでは有名な選手だったみたいですね。どうやら彼は大学リーグ三連覇の立役者だったみたいです！あのルックスであのスーパープレイ、メジャーも欲しがっていたらしいですが、あっさりと日本に帰国したとのことですよ」

　「彼ならメジャーでもやっていけるでしょうね。益々謎の多い選手ですね、目が離せません」

　実況を聞いていたメンバーから途端にヴィルキンスへと質問が飛ぶ。

　「え？！なんで日本にいるの？！メジャーって！」

　「ヴィルお前そんなすごい奴だったの？！」

　ヴィルキンスはメンバーの勢いに思わず後退る。

　『会長から話もらった時に、パ・リーグだとケンちゃんに会える回数も多いって聞いて』

　え、そんな事であっさり帰国したのと一同、同じ事を考えたのだろう、一瞬場が静まり返ったのであった。少し照れ臭そうに話すその姿があまりにも可愛かったので皆何も言うまいと黙りこむのだった。

　七回裏――。ランナーが二塁にいる状態でバッターはヴィルキンスへと回って来た。ヴィルキンスがチラッと二塁にいる柳田を見ると、柳田はグッと親指を立て後ろの方を指す。其の行動に思わず笑ったヴィルキンスはヘルメットをかぶり直し、バットを一度回すと構えた。もうその視線はピッチャーの向こう側しか見えていなかった。

　カーン、白球は美しく弧を描き、そのままセンター方向のスタンドへと突き刺さるツーランホームラン。此の回でホークスは三点、八回表で日ハムが一点返すが、此の日、四対二でホークスが勝利を収めたのだった。