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 杉谷を西川から引き剥がしたのはヴィルキンスだった。急に引っ張ってごめんね、とヴィルキンスは杉谷の旋毛にキスをした。

 「……お前、なんやねん」

 西川も突然のことで驚いていたが、ヴィルキンスの行動を目の当たりにし眉間に深く皺を刻んでいた。

 『ケンちゃんの幼馴染み様よ、文句ある?』

 ヴィルキンスのオネエ口調に西川も戸惑いを見せたが、それよりもこの状況が面白くないのか眉間の皺は深いままだった。

 「拳士さん離せや」

 『黙らっしゃい! アンタ、好きな子には意地悪するタイプかしら。ガキね!』

 「なんやとこのオカマ。意識して欲しい浪漫も分からんのか」

 それを皮切りに二人の言い合いはヒートアップしていった。いつの間にかヴィルキンスの腕から解放された杉谷を中村が避難させる。
 双方の言い合いに両ベンチも何事かと数名走り寄って来た。中村も杉谷も二人に唖然とするしかなかった。

 「遥輝なにしとんねん! おちつけって」

 「ヴィル! どうした?!」

 二人を引き離した両チームはただならぬ空気に、全員ベンチに戻るよう言い聞かせた。

 「A、ごめんな」

 柳田に肩を抱かれ去ろうとしたヴィルキンスに杉谷が謝る。ヴィルキンスは柳田に目配せし杉谷の両手を包み込んだ。

 『ケンちゃんが謝る必要ないのよ』

 ヴィルキンスの真剣な眼差しに杉谷は息を飲む。あんなに泣き虫だった幼馴染みは見る影もなかった。逆に、彼の目に映る自分こそが泣きそうな情けない表情をしていた。

『西川遥輝もその他の皆さんにも言えるけど、ケンちゃんを傷つける奴は誰だって許さないわ。いじられキャラにしてもそこに愛がなければただのイジメよ』

 そう言うとヴィルキンスは杉谷の後ろ側を睨みつける。

 『ケンちゃん見ててね。アタシがケンちゃんを傷つける奴等なんて成敗してくれるわ!』

 ヴィルキンスはいつもの花も綻ぶ笑顔で両の手を鳴らすと柳田達と共に颯爽とその場を去るのだった。



 「お前の幼馴染み可愛い顔して怒らすと怖いのな」

 杉谷の先輩である矢野が杉谷の頭を乱暴に撫でながらそう呟いた。しかし其の手をいつもより優しく感じた杉谷は慌てて矢野の背中を見るが、次々と頭を荒く撫でられ叶わなかった。皆が次々とベンチに戻り残されたのは西川と杉谷だけだった。西川は気まずそうに歩き出すと慌てて杉谷も追いかける。追いついた杉谷に、西川は歩調を合わせるのだった。

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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時

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