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 早朝にも関わらず、一人の青年がホークスのキャンプ地にてコーチと共にバッティング練習を行なっていた。右打席で打ち終えたかと思うと続いて左打席に立ち、再び練習を再開する。一八〇はあるであろうその体躯は無駄な筋肉をつけておらず、次々へと白球を飛ばしていく。
 バッティングを終えた青年はコーチと二言三言話をしてから、バットをコーチに預け外野へと走った。

 この光景を偶然居合わせた中村晃はベンチから息を呑んで其れを見つめていた。
 彼もまた自主練をしようと思いグラウンドに向かった。見知ったコーチと見慣れない男の後ろ姿に声をかけるタイミングを失い、其の練習風景を盗み見たところ度肝を抜かれた。

 「あれ、晃! 早いねー」

 「おーっす!!」

 「晃! 早く来るなら俺も誘えよー」

 どれくらいの時間その光景を見入っていたのだろうか。気づけば中村の背後から仲間がベンチに入って来たことにより中村は現実に戻された。軽く挨拶を返したところで、柳田がグラウンドの光景について問いかける。

 「アレ、誰なん?」

 「いや、俺も知らなくて。俺が一番乗りしてから一時間は二人で練習してるんだよね」

 チームメイトが続々と話し始めるが皆の視線はグラウンドの二人、正しくは謎の青年に視線を注いでいた。深く被った帽子からは、其の容姿は確認できそうになかった。
 外野ノックを終えた青年はコーチの元へと走り寄り、再び二言三言話すとそのままクールダウンに移っている。
 コーチがバットを持ったままベンチに戻ってくると、柳田が堪らず声をかけていた。

 「飯田コーチ! アレ、誰っすか!!」

 直球すぎる柳田の物言いに誰かが苦言を溢すが、皆の目は謎の青年について知りたそうに外野守備コーチの飯田に注がれている。
 飯田は目を丸くすると皆を一度見回して苦笑した。

 「まぁ、気になるよな。丁度、これから朝礼始めるから、全員用意できたらグラウンド出てこい」

 バットを仕舞いさっさとグラウンドに出た飯田を目で追うと、いつの間にグラウンドに着いたのか監督達が集まり青年と話していた。流石に監督コーチ陣を待たせるわけにはいかず、中村達は慌てて荷物などを片付けた。

 「ってことだから、全員惚けてないでグラウンド行くぞ!」今年からキャプテンを任された内川聖一が声をかける。

 帽子を被りながら中村は例の青年の後ろ姿に疑問を持っていた。

 「(どこかで、見たことあるんだよなぁ…気のせいか?)」

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作者名:ペリー | 作成日時:2020年8月5日 2時

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