F7:マスコットの中の彼女2 ページ44
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恋愛レベルが純粋すぎる
グラウンドの片隅でストレッチをするAちゃんに、近ちゃんや拳士さんが絡みに行く。それに便乗して大将や泰示さんも。彼女のポニーテールが眩しく揺れた。
「そんな気になるなら、話かけたらよか」
「それができたら苦労しないっすよ」
ヘタレか、そう笑われたのは昨日今日の話しじゃない。
「西川さん、なんでですか」
そんなの俺が聞きたい。目の前で涙を堪えて上目遣いをする新人チアに、どうしたものかと俺は頭を悩ませた。
「ごめん。もう遊ぶんやめてん」
「わ、私の何がダメなんですか!?」
「俺、好きなこできたから遊ぶの卒業したんよ」
目の前の子は、自分の魅せ方をよく分かってる。上目遣いだったり、この髪型だったり、どれも彼女に似合っていた。少し前の俺だったら速攻で遊んでいたと思う。今では何の魅力も感じひんから恋ってすごい。
「あの人のどこが良いんですか!?確かに美人だけど、それだけじゃないですか!!」
彼女の指差す方に視線を向けるとAちゃんがいた。スウェット姿のポニーテール。その手にはなぜかスルメを持っており、近ちゃんと2人仲良くスルメを食べているのだ。
「ははは!はー、おかしい。俺も貰いに行ってこよ」
「西川さん!」
「どこがって、全部やないかな。あの飾り気のないところとか、全部」
『西川さん』
名前を呼ばれて振り向けば、そこにはAちゃんがいた。
「え?!Aちゃん!」
『これ、そこでトレーナーさんが渡しておいてって』
「え、あぁ、データか。ありがとう」
『いいえ』と微笑むその姿だけでも美のレベルが違いすぎる。近ちゃんすごいな、こんな幼馴染みおったら俺、我慢ならんねんけど。
「もう帰るん?」
『近ちゃんと杉谷さんとご飯食べに行くんです』
「え!えぇなぁ、俺も行っていい?」
『はい、近ちゃんに連絡入れますね』
気さくな子、益々好きやわ。最近少しずつだが、話す頻度が増えてきた。嬉しい。
「なぁなぁ。Aちゃんの好きなタイプってどんなん?」
『え、えー。笑わないですか?』
「ぜったい!笑わへん!誓って!」
『小学生から変わらないんですけど・・・足の、速い人です』
頬を赤らめ、照れ臭そうに笑った彼女は世界で1番可愛かった。まじで好き。てか、見た目とのギャップがすごい、回答。
恋愛レベルが純粋すぎて、ますます俺は彼女に溺れることになるのだった。
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年9月3日 5時