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目の前に置かれたオムライス、つやつやとろとろの卵に思わず俺の喉が鳴る。チラリ、と彼女を見ると『どうぞ』と笑っていた。
「いただきます・・・うまっ!!」
美味しそうだとは思っていたが、こんなに美味しいだなんて。しかもこんなに大きなオムライス今まで食べたことない・・・幸せだ。
「地元も広島?」
『九州です。こっちには就職で来たんですけど、今では住みなれちゃったので此処でお店出しちゃいました』
「そうなんだ。あ、俺丸ね。丸佳浩、野球選手」
『どうりでお見かけしたことあるお顔だなぁ、って思ってました。駅とかに大きくポスター貼られてますよね』
「うわぁ、なんかそれ恥ずかしい」
悪戯ぽく笑う彼女に顔が熱くなるのが分かった。
『Aです、いちおここのマスターです』
あの日から俺は毎日のように店を訪れた。
料理も美味くて、とびっきり可愛いA。彼女に惚れるのも時間はかからなかった。押しに押しまくった俺は無事にAと付き合い、チームメイトにも紹介した。キクとか誠也が煩かったが、いつものことなので気にしなかった。
「A結婚しよう」
『え、あの、』
「あー、じゃなくて。結婚してください」
俺と違って大きな瞳に涙をこれでもかと溜めたAに、不謹慎にもときめいた。今日も今日とて、Aは可愛い。
『っ、はい』
結婚した翌年、子供も産まれた。ちなみに、子供は全員俺似である。俺の遺伝子強すぎる。
結婚して子供が産まれた今でもAのことが可愛くて仕方ない。出かける時は毎回手を繋いで出かけるし、寝る時だってくっついていないと嫌だ。行ってきますとおかえりなさいのキスがないと無理だ。
きっとこれは運命だ
そう言うと、彼女は恥ずかしそうに笑った。その顔を見て俺が襲いかかったのは仕方ないことだから許して欲しい。
巨人に移籍した今でも、Aは東京ドームの近くに喫茶店を開いてる。最初は皆に黙っていたのだが、和真が通いだし、クチコミで“美味くて可愛いマスターのいる店”と選手内で有名になった為、バラさずおえなかった。
「丸さーん!」
「あ、ギドーさん」
「いろんな選手から聞きましたよ!奥様がすごく可愛いと」
「めちゃくちゃ可愛いです。でも子供は俺似です」
「元木ヘッドコーチは、顔でかいのも似るんかなって笑っていらっしゃいました」
「嫁曰く、愛される面積が広くていいと思う、らしいです」
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年9月3日 5時