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Sh7:料理人(別ver) ページ37

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 自分のすべてを捧げたいと、そう思えたからからこそ成長できた。





「よろしくお願いします」

『っよ、よよよろしくお願いしましゅ!』



 あ、噛んだ。



 心身ともに疲れきって戦線離脱を余儀なくされた俺に、監督が紹介してくれた栄養士の女性。食満(けま)Aさん。あがり症だろう。前髪で目元は見えないが、耳まで真っ赤に染まっていた。
 まぁ、おかげで俺の緊張は解れたけどね。差し出した俺の手に恐る恐る触れるから、悪戯心から勢いよく、ガッ、と掴んだ。

『○$#☆€っ!!!?』

 彼女は言葉にならない奇声を発した。指先までタトゥーを入れているのに、すごいギャップだ。思わず声を出して笑ってしまう。いつぶりだろう、こんなに笑ったのは。



 この人の作ってくれるご飯、少しでも美味しいと思えたらいいなぁ。



「何食べても、美味しいって思えなくて」

『え?!だ、大丈夫ですか?体調とかは……』

「え、あ、うん。他は少し眠れなかったり、疲れが取れにくかったりかな」

『なるほど……嫌いな食べ物はありますか?』

「うーん、特にはないけど。枝豆はあまり食べないかなぁ。あ、最近暑いからかな、あまり食欲もわかなくて」

『最近暑いですよね……よし!それじゃあ簡単に何か作りに行ってもいいですか?』

「いいけど…冷蔵庫何も入ってないよ?」

『私買い物してから向かいます!』

「いやいやいや。それは一緒に行こう」

 最後まで遠慮する食満さんをどうにか説き伏せて、家の近くにある大型スーパーに一緒に行くことに成功した。

 食満さんって男慣れしてなさそうだなぁ。今時珍しい。てか、前見えてんの?



***



「さ、入って」

『お、おおお邪魔しまふ!』

「“お”が多い上に噛んでるからね」

 そう指摘すると、照れ笑いする食満さん。あ、今のイイ。不覚にもときめいてしまった。

 食満さんはいそいそとキッチンに立つと持参したエプロンを腰に巻く。英語表記だが、“ニューヨーク”、“ホテル”という単語だけは読み取れた。手持ち無沙汰な俺は彼女の立つキッチンのカウンター椅子に腰掛ける。

「見てていい?」

『は、はひ!』

 吃りながらも返事してくれる食満さん。エプロンのポケットからヘアクリップを取り出し、伸びきった前髪をざっとポンパドールにした。

 露わになる食満さんの顔に、俺は思わず目を見開いた。



 待って、食満さん。



 めちゃくちゃ可愛いなんて聞いてない。









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作者名:ペリー | 作成日時:2020年9月3日 5時

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