G18:元アイドル2 ページ36
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もう手の届かない存在ではない。
ついに熱愛報道か?!元人気アイドルを射止めた名投手!!!
【某日、都内のバッティングセンターに現れた一組の男女、読売巨人軍の菅野投手と元人気アイドル四月一日Aだ。四月一日にバッティングを教えたりと二人の距離は近く、友人関係とは言えないだろう。一時間ほど楽しむと二人は手を繋ぎ、仲睦まじくバッティングセンターを後にし菅野の車で出て行った。
アイドル時代同グループのメンバーが度々週刊誌を賑わす中、一度も浮いた話が出ることのなかった四月一日。卒業した今、今後の彼女の恋愛模様にも注目が集まる。】
『わぁ』
俺の腕の中でミルクティーを飲むAが急に声を上げた。彼女の視線の先はテレビの芸能ニュース、話題は俺とA。どうりでさっきからLINEの通知がうるさいのか……無視だ、無視。
『意外と遅かったね』
「日本のパパラッチもまだまだだね」
腕の中でくすくすと笑う彼女と恋人になれる日が来るなんて、夢のようだった。
ずっと好きだった。
彼女が人気を博す前から大好きだった。恋愛禁止のグループに所属する彼女に恋愛感情を抱いていたが、いちファンとして応援し続けた。彼女がアイドルとして人並みならぬ想いでいることを知ったからだ。
「その時が来たら、迎えに行ってもいいかな?」
あの日静かに涙を流した君が強く、何度も頷いてくれた。俺はそれを黙って拳を握り見届けることしかできなかったっけ。
卒業した日、ひとりライブ会場の扉をくぐり抜けた君を、キザに花束を持って出迎えたのは記憶に新しい。俺に気づいた君が走って胸に飛び込んで来てくれた時、初めて抱きしめた身体があまりにも華奢で驚いたんだよ。
『なぁに、トモくん。ニヤニヤして』
「んー?初めて会った日から今日までを思い返してた」
『ふふ!懐かしい!』
ぎゅう、と抱きしめつむじに鼻を埋める。お揃いのシャンプーをつかってるのに、なぜ彼女はこんなに甘い香りがするんだろう。
『トモくん、あったかい』
「暑い?」
『ううん、とっても心地いいよ』
照れ隠しにミルクティーを啜る彼女。マグカップを持つ片手を絡めとり、その指先に、ちゅ、とキスをおとす。くふくふ、と笑みをこぼす彼女を抱きしめ直し、たわいもない話題に華を咲かす。
もう、彼女は手の届かない存在ではない。
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作者名:ペリー | 作成日時:2020年9月3日 5時