ページ ページ19
.
「古参ちゃーん!」
あぁ、前方から天使が走ってくる。携帯を素早く取り出し、ビデオモードにする。
「え?え?動画?それ動画?」
あまりの可愛さに口元を手で覆い、無言で頷く。
「どぉもぉ、北のスギノールでぇす」
う、ウィンク付きだと!?なんとか停止ボタンを押した私は悦に浸る。
「……拳士」
「晃さん!ちわっす!え、何?俺なんかした?」
『い、いえ!杉谷選手今日も元気いっぱいで何よりです!』
「えへへ」と、こんなにも照れ笑いが可愛いアラサーを私は知らない。帝京高校の二人が目の前にいるとなれば、私のシャッターを押す手は止まらない。
「……撮りすぎじゃないかな?!」
「なんか前よりレベルアップしてるよね」
ついにはレンズを覆われてしまった。
『この3年間、我慢して我慢して我慢しまくった結果です』
「あー!Aちゃん、俺も!俺も撮ってぇ!」
目の前でポーズを決めてくれる柳田選手。私のシャッターを押す指に力が入る。
『か、カッコいい!!うわぁ!色気がすごいです!』
「そぉかのぉ?Aちゃんに褒められると照れるのぉ」
「見せて!」柳田選手がカメラを覗き込んで、今しがた撮った写真を確認する。カメラを首から下げている為、必然的に距離が近い。
ぁああああ!無理ぃいいい!!近い!近すぎる!柳田選手、めちゃくちゃ良い匂いする!!
「なんじゃあ?顔を赤うして。可愛いのぉ。食べとうなるけぇ、禁止じゃ」
柳田選手が耳元で囁いてくるが、そのセクシーヴォイスに私の耳は孕みそうだ。いや、絶対孕んだ。声に集中しすぎたせいで、柳田選手がなんて言っていたのか分からないが、柳田選手はくしゃりと笑うと私の両頬を押しつぶしてくる。
「……ギータもう行くよ。A、先帰らないでね」
え?!ご飯行くの本当だったんですか?!え?!私の戸惑いを知ってか知らずか、中村選手は柳田選手を引き連れてベンチに戻っていく。
中村選手の後ろで「なんじゃ?!晃、さっきのどういう意味じゃ?!それに呼び捨てしちょったじゃろ!!」と叫んでいた。
「……ほら、遥輝。おれらも戻るよ」
「はぁい。Aちゃん、中村さんと2人っきりで出かけちゃダメだからね」
「約束」と西川選手は私の小指に自身の小指を無理矢理絡めて、自身のベンチへ戻っていった。
.
134人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ペリー | 作成日時:2020年9月3日 5時