チェレステとホワイト

1 ページ1

「Aさんって、わかりやすいですよねぇ」



部活が終わった部室の中。

にこにこにこにこ、と効果音が聞こえてきそうなほど笑顔を見せる一個下の後輩、真波くん。

私のネクタイに手を伸ばし、タイピンに触れる。




「綺麗なチェレステカラーですねぇ」

「あ、あは…そうでしょ…気に入ってる…んだ…」

「あと、スマホのケースも」

「あ、それは…たまたま…雑貨屋さんで見つけて…」

「ペンケースもですよね？あとー…鞄についてるキーホルダーもチェレステカラーですよね！」

「…」

「ね！」

「…なっ、何が言いたいの…！」

「荒北さんのこと好きでしょう？」






思わず両手で顔を覆った。

うそでしょ、まさかでしょ。ずっと隠してきたのに。

周りにばれないように、見たい気持ちを抑えつつ 荒北さんに視線がいかないように
踏ん張ってた。

マネージャーだからこそ、部内恋愛はしたくない。

そういう雰囲気を出しただけで、部活の緊張感はなくなる。そう思うから。

あと…今の荒北さんとの関係性を崩したくないっていうのもあった。


でも、でも、でも。





「(まさか、一番バレなさそうな子に真っ先にバレるなんて…！)」

「あはは、どうしたんですかぁ？」

「…なんでも、ない。確かに荒北さんのことは先輩として慕ってるけど。
特にそういう…あの、恋愛感情はないよ」

「ふぅん？」




そう言うと、真波くんは、笑顔を崩さないまま 私の周りを歩き出す。

わざとなのか、ゆっくり、本当に、ゆっくりと歩く。





「身に着けてるものは荒北さんのロードバイクの色、チェレステカラーのものが基本。

あと、見ないように、見ないようにしてるのはわかりますよ？
でも、実際 目は荒北さんを追ってる。

しかも、荒北さんを見てる目」





私の前に真波くんが止まった気がして、恐る恐る顔を覆っていた両手をどけると

にこ、と相変わらず笑顔の真波君が 私の目をじっと見つめてこう言った。




「“あなたが好きです”って言ってる目です」

「！」

「自覚なかったですか？」

「自覚以前に…言ったでしょ、そういうのじゃないって」

「Aさん、往生際悪いですね」

「…も、もし、仮に、私が荒北さんのこと好きだとしたら……言うの？皆に」

「え？言いませんよ」




その言葉を聞き、少しほっとする。

と思ったのもつかの間。




「Aさんが直接言えばいいな、って。

荒北さんに」





綺麗な笑顔で、とんでもないことを彼は言い放った。

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す