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「A練習生」
『はい』
「紹介シートには“最後の挑戦”と書いてありますが、本当ですか?」


ソクフンさんの言葉に少しだけ会場がざわついた



『……はい、その通りです』


そして僕の返事に周りがさらに騒ぎ始める

「最後って…」
「まだ20でしょ?早すぎるんじゃ…」



練習生の戸惑いの声が聞こえてくる
……それもそうだよね
ここにはもっとたくさんの年上のヒョンがいて、この先もずっと諦めずに食らいついていく人たちもたくさんいるから



「何か理由が?」
『…』



『詳しい理由は、僕の胸の中だけで留めたいのでお話できませんが、……ただ、僕は誰よりも情熱を持ってここにきています。
僕にはこれが全てです。全てを賭ける気持ちで来ました。
正当な評価を得られるこの番組とこの場に感謝をしながら一生懸命頑張ります。』

そう言って頭を下げると会場全体から拍手が巻き起こる


「いいぞA〜!!」
「かっこいい!!!」
「頑張れー!!!!」


まだ話したことのない練習生のみんなまで歓声を送ってくれる
その事実だけで心が温かくなる



「表情だけでも本気なのがみてとれますよね」
「うん。本当に並々ならぬ思いを持って挑んでるんだね」
「やっぱり本気の子は顔と行動から全く違うよな」
「はあ……アイドルの門もずいぶん狭くなってきた」
「そうだね。だからこそきっとここにいる子達みんなが、熱い思いを持ってきてくれてるんだよ」


拍手が鳴り止むと、ヨンジュンさんがマイクを握った


「…じゃあステージ披露してもらいましょうか」
『はい』
「いや〜第一印象がいいから、ステージも良いものだと嬉しいですね」
「ですね。練習生歴が5年なのできっと上手いと思うけどね」
「期待大」
「うん、期待して見ちゃうね」







大丈夫
何回、何度、練習したと思ってる
大丈夫
今日のための練習だろ




「あとは楽しむだけ!」

ケイタくんの言葉を思い出す




僕は何度も繰り返し練習してきたポディションへ付き、ゆっくりと目線をマスターさんたちへと向ける




「うわ…………」
「テーバ………なんて表情……」






ここはもう僕だけのもの







さあ、
始めよう






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作者名:えのもと | 作成日時:2023年3月19日 14時

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