検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:9,940 hit

8 ページ8

『兄を殺した坂田に
自分の名前を教えるのが嫌だった。』


「……名前…」


「そう、お前の名前。


……もしかして…わからんとか…?」


坂田は心配そうに私を見つめる。
とても兄を殺したようには見えない。


「………」


でもこの目で見たから、
あの時見てしまったから、
この赤い髪の男は、信用ならない。

だからといって自分の名前を教えないと
不便なのは目に見えている。



そもそも私はなんでこんなところにいるんだ。


「……家に返してください……」

今私がすべきことはそれだ。
ここまで、こんな海まで出てきておいて
自己紹介までさせてアレだが、私は頼んでもいないし
望んでもいない。
出来ることならいますぐ帰りたい。




帰ったって
誰も待っててくれる人はいないのに?
帰ったって
私が帰りを待つべき兄はもういないのに?





「返してく……ださい……」


それでも
私は今そう言うしか無いのだ。


「お兄ちゃんを……返してください……」


私のその一言で、空間に沈黙が流れ
嫌な雰囲気が辺りを覆った。

ただ波の音だけが響いていた。


その沈黙を破ったのは

「……ごめんね、
お家には返してあげられないや。
陸も、……」


坂田だった。

悲しそうに笑って、また下を向いて黙ってしまった。


再び沈黙が訪れた。

ねぇなんで
なんでなの。


「何でお兄ちゃんを殺したの、
お兄ちゃんが何したの、ねえっ…

教えてくれないと納得できない…!!」


勢いに任せて言うと涙が溢れ出す。
きっとお兄ちゃんが殺されてから、
ずっと我慢していた分。

「それは……」


口をつぐんでしまった坂田。


「陸がお前を…」


うらたさんが口を開いた。
がそれは


「陸が俺たちの情報を持っていたから。
俺たちにとって不利な情報を持ち出されたから。
それだけだよ。」


坂田によって遮られてしまった。

うらたさんは目を見開いて、
オイと声を張り上げようとしたが
それも坂田によって遮られてしまう。


「いいの、うらさん。
俺が手を下したのは事実だよ。恨まれて当然。

いつだって恨まれるのは俺の役目でしょ?」


「っ……」

何を話してるのかはわからない。
けれど私が坂田を恨んでいるのは事実。
坂田が兄を殺したのも事実だ。


「さかたん…」

3人は心配そうに坂田を見つめた。
そしてうらたさんは



「ひとつだけ、忠告しておくよお嬢さん。」


私を真剣な眼差しで見つめてきた。


透き通った緑色の瞳で。

9→←7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

山犬 - 面白いです!はまっちゃったかも……頑張ってください!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです!はい。これからも応援していますよ! (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わかば | 作成日時:2017年5月23日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。